また、Scrum Venturesの宮田拓弥さんとの対談(第12回第13回)でも、話題にのぼりましたが、ゼネラル・モーターズ(GM)社がCruise Automation社買収後、共同創業者兼CEOを自動運転部門のトップに据えたのは、スタートアップのケイパビリティを本体に取り込もうという意図からです。そして、私の古巣でもある米Disney社では、Twitter社CEOのジャック・ドーシー氏やFacebook社COOのシェリル・サンドバーグ氏といった、IT企業の超大物をボードメンバーとして迎え入れることなどを通じて、会社全体のデジタル化を急速に推進しています。

 さらに、豪州の主要銀行の一つであるNational Australia Bank (NAB)が行ったトランスフォーメーションは圧巻です。サービスの内容から、オフィスや組織のあり方、従業員のマインドセットまで、すべてをカスタマーセントリックなものに置き換えています。どちらかと言えば、カタい印象のある金融業界ですが、デジタライゼーションに向けて大改革を行っているのは、NABだけにとどまりません。世界に目を向けると、すでにスタッフの3分の1がコンピュータ・エンジニアで、データ・サイエンティストの登用に積極的なゴールドマン・サックス然り、フィンテック戦略に力を入れるオランダの金融機関・INGグループやスペインの金融機関BBVA社然り。どの企業もデジタル化に向けて、すさまじいスピードで変革を推進しているのです。

 そしてこれらの変革は、CEOを始めとする経営執行陣の強い信念の下、紛れもなくトップダウンで推進されています。

デジタル担当者任せではなく
全員がデジタルを駆使できる体制を

 翻って、日本に目を向けるとどうでしょう。ソフトバンクや楽天、ヤフー、DeNA、スタートトゥデイといったデジタルそのものを生業とするような、一握りの会社群を別にすると、残念ながらまだ大きなうねりにはなっていないように思います。日本の企業には優秀な経営者、社員が本当に大勢いるのですが、皆が、特にトップ層が、それこそ株主や幹部層、社員に対して「忖度」してしまっているのか、大ナタを振るって改革を推進しようとするリーダーシップが足りないのではないかと考えています。

 対談(第8回第9回)でご一緒した、株式会社プロノバの岡島悦子さんがおっしゃるように、社長を40歳くらいのデジタルネイティブにしないと何も変わらない、というのも一理あるでしょう。

 企業のデジタル化についていえば、この数年で会社のデジタル化を担うチーフデジタルオフィサー(CDO)という役職を設置する企業が増え始めているようです。今後は、デジタルの専門部署が独立してデジタル化を推進していくというのではなく、すべての部署でデジタル化が行われるようになるはずです。いずれは社内全体がデジタルを当たり前のものとして活用するようになるわけですから、早晩「CDO」のような役職もなくなるでしょう。そうなると、まだその役職がある会社は公然と「うちは遅れています」と言っているようなものです。