「ちゃんと伝えたはずなのに、部下が話を聞いていなくて困る」
コミュニケーションで悩むすべての人に向けた本連載<「聞くだけ」会話術【実践編】>最終回は、「部下とのコミュニケーション」という世代間の隔絶にまつわるお悩みを取り上げます。『「聞くだけ」会話術』の著者は、この悩みにこそ、コミュニケーションのキモが隠されているという。
誰もが陥りがちな「自分は伝えたはずなのに」という「自己中心的コミュニケーション」から抜け出すための、「地図の寓話」とは?(取材・文/山根洋士)

「伝えたはずなのに、部下が言うことを聞いてなくて」

Q 部下が自分の言うことを聞かなくて困っています……。
   (44歳、男性、官公庁勤務)

  20代の頃、若手が「部下」ではなく「後輩」だった時代は、自分で言うのも何ですが、頼れる兄貴的存在で、指導力にも自信がありました。しかし、上司と呼ばれる立場になって、役職が上がれば上がるほど、部下が自分の言うことを聞かなくなりました。
  特に最近の20代の若手は、話を聞いているのかどうかさえわかりません。仕事の基本は「報」「連」「相」だと、何度も繰り返し伝えているのですが、あってもせいぜい報告。連絡や相談はほぼ皆無。
  このままでは、上司である自分の査定にも響いてくるので困っています。どうにかして、彼らを動かすよい指導方法はないでしょうか?

 僕も営業マン時代に、部下を指導するポジションを経験しました。

 その時はスパルタ方式で結果もついてきたのですが、今の時代にそのやり方では、若い人たちはついてこないでしょう。その原因を僕に気づかせてくれた、マスターの言葉があります。

「地図」の寓話が教えてくれた、大切なこと

 部下の「地図」を把握する。すなわち、相手の地図を理解して、指導に反映させる。人にスキルやノウハウを教える仕事をしている僕が、この考え方を知らなかったら……。今頃どんな講師になっていたのだろう、やっていけてるのだろうか、とゾッとします。

 ここで言う「地図」とはいったいなんのことなのでしょうか?