切れ長の目が、手元のカードに集中する。カードを押さえた両の手は小刻みに震えている。人差し指と親指で、カードの先を巻き込むようにゆっくりとめくり上げていく。数字の頭が見え始めるまでの時間は長い。全身全霊をかけてめくったカードだったが、男性の表情は最後まで硬いままだった。たった1ゲームで約38万円が溶けた。しかし、その後も男性は黙々と賭け続けた。

 とはいえ、彼らにとって38万円ははした金だ。超VIPともなればそのプレーは“包房”であり、最低の賭け金は100万香港ドルといわれる。むしろ、VIP客こそがマカオのカジノ産業の主要な財源となっている。

 天井から吊るされた電光掲示板には、このカジノで1人が1日に儲けた最高金額が掲示される。最近では2018年2月24日に912万香港ドル(約1億3000万円)。そんな桁外れのツキに恵まれた人もいる。

 金が動くところ、そこには周辺産業が発展する。広い賭博場をウロウロするのは、俗に“黄牛”といわれる闇ブローカーだ。手あたり次第、客に声をかけ、「獲得したチップを換金させろ」と迫る。

 “黄牛”には女性もいて、女性用トイレでも交換に誘い込んでくる。「あなたと交換するとどんなメリットがあるのか」と尋ねると、「チップの交換を正規の手続きでやるといろいろ面倒くさいことがある」のだそうだ。「税金や手続き料など差っ引かれて、手取りが少なくなる」という。

 賭博場をうろつく “黄牛”は、1人や2人ではない。相当な数が入り込んで、白昼堂々と客を口説いて回る。経営側は事実上これを黙認しており、特に取り締まる様子はない。マカオの税収が目減りしてしまうにもかかわらずだ。