第1章
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「1年と2ヵ月ぶりですね」
森嶋が帰宅の用意をしていると、植田が近づいてきた。
「一度お会いしましたね、森嶋さん」
「ええ、ワシントンで」
彼も覚えていたのだ。
「あなたが首都移転構想のレポートを出したんですね。でも、どうしてこの時期に」
「ハドソン国務長官が総理と会見しました」
「知っています、あなたが通訳を務めたんでしたね。やはりアメリカの要求なんですか」
「そうとも違います。東都大学高脇准教授のレポートは」
「読みました。だから、ツテを頼って、国交大臣にこの極秘チームのオブザ―バーという形で参加させてもらうことになりました」
極秘チームに力を入れて言ってかすかにほほ笑んだ。極秘と言いながらも、すでに極秘でもないのだろう。
「北海道選出の衆議院議員、39歳、当選3回、予算委員会でしたね」
「知ってたんですか」
「知りませんでした。でも、あなたが部屋に来て1時間後には、あなたのデータはチーム全員が知ってました。誰かからメールが来ました。チーム全員への一斉メールです」
植田は苦笑した。
「政治家には用心しろということですか」
「情報量は多いほどいいですからね」
「官僚らしい発想だ。しかし、このチームに集まった者たちはある意味勇気がある」
そう言って笑みを見せた。
どことなく政治家らしくない男だ。
そのとき、植田の携帯電話が鳴り始めた。
「私は、事務所に帰ります。勉強させてください」
植田は、森嶋に頭を下げると部屋を出て行った。