この際、常識に捉われず、新たな発想で考えてみたらどうだろうか。「トランプ以前」の「世界の警察官」だった米国にはもう戻らない。本稿は、米国が「世界の暴力団」となってしまった国際社会を、どう生き抜いていくかを考える。

トランプ政権の中国、トルコ、
イランへの経済制裁による混乱

「貿易赤字」を「企業の損失」だと勘違いしているとしか思えないトランプ大統領は、中国に対して、ほとんど言いがかりでしかない「貿易戦争」を仕掛けた。まず6月、中国の知的財産権侵害への制裁措置との名目で、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す方針を発表した。

 そして、実際に7月6日、340億ドル分(818品目)の追加関税を課し、7月23日、残りの160億ドル(約1.8兆円)相当の中国製品に、追加関税を上乗せした。同日、中国も、同規模の関税を米国製品にかける「報復合戦」になっている。

 一方、中東においても「アメリカファースト」による混乱が広がっている。「イラン核合意」から離脱した米国は、8月7日、自動車や貴金属の取引停止という対イラン経済制裁の第一弾を再発動した。

 米国は、米企業だけでなく欧州などの企業にも制裁発動を求めている。11月4日には第二弾の経済制裁として、イランとの原油取引の停止を欧州や日本に求めるという。欧州やロシア、中国は、現行の「核合意」の枠組みを維持しようとしているが、トランプ大統領の強硬姿勢で困難な情勢だ。

 イランは、バラク・オバマ米政権によって進められた2015年の「核合意」後に、2ケタの経済成長を実現していた。だが、トランプ政権による制裁の再発動で通貨安に拍車がかかり、経済が急激に悪化している。

 イラン国内では、イラン革命防衛隊高官が「イラン産原油の輸入停止を求める米国の呼び掛けに各国が応じるならば、ホルムズ海峡の封鎖に踏み切る」と警告するなど、「強硬派」が勢力を増している。また、イランと、イスラエル、サウジアラビアなどの対立が激化している。

 さらに、米国とトルコの対立が深まっていることも、中東地域の政治・経済を混乱させている。トランプ政権は、トルコが2016年のクーデター未遂事件に関連して自宅軟禁状態にしているブランソン牧師の解放を求めてきたが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が応じなかった。これに対してトランプ大統領は、トルコに対してアルミニウムと鉄鋼の関税率を2倍に引き上げると発表した。トルコ・リラは1ドル=7.2リラの市場最安値を記録し、年初からのリラの下落率は4割に達した。