宗教色の後退が分断に拍車
様変わりするコミュニティの姿

 かつての米国では、政治から宗教色が後退すれば、世論の分断は和らぐと考えられてきた。同性婚や妊娠中絶のような争点では、信仰の有無が対立軸と重なりがちだったからである。

 ところが実際には、宗教色の後退は、従来とは異なった論点で、世論の分断を深める結果をもたらしている。教会から疎遠になった人々には、同性婚などの宗教と重なりやすい論点ではなく、人種や国籍といった世俗的な論点で、意見を先鋭化させる傾向があるからだ。実際に米国では、同じ宗教の信者でも、教会活動への参加の度合いが低下するほど、移民に対する意見が厳しくなることが確認されている。

 移民に厳しいトランプ大統領の政策は、「トランプの教会」に集うコミュニティの思いを代弁しているのかもしれない。日常生活から教会の影が薄れるのと同時に、対立を諌める訓話を聞いたり、多少なりとも人種間の交流を行ったりする機会は失われた。教会から足が遠のいた人々は、宗教の教えにコミュニティの絆をみつけられなくなったからこそ、人種などの世俗的な観点で仲間意識を強めている可能性がある。

 マケイン議員の葬儀を終えた米国では、11月の議会中間選挙に向けた党派間の論戦が熱を帯び始めた。熱狂的な支持者に活路を託すトランプ大統領は、ひたすら自らの教会で語り続ける。

 思い返せば、今では融和の象徴とされるマケイン議員も、2008年の大統領選挙では、攻撃的な言動で知られるサラ・ペイリン元アラスカ州知事を副大統領候補に選び、今につながる分断への道筋を開いた側面がある。ワシントン大聖堂を包み込んだ党派を超えた協力への期待は、夏の終わりのはかない夢に過ぎないようだ。

(みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長 安井明彦)