慌てた修は北九州市の実家に住む父親に連絡しますが、誰も電話に出ません。修が大学に進学した3年前、母親が死亡、その後に設計事務所を営む父親がフィリピン人の女性に金を貢ぐようになったため、実家とは音信不通でした。

「ゼロ・ゼロ物件」で
追い出されて“難民”に

 久しぶりに実家に帰ってみると、いわゆる夜逃げの状態。学費だけでなく仕送りも止まったため、途方に暮れていると、家のチャイムが鳴ります。ドアを開けると、家を管理する「東亜パレス不動産」の荒木(吹越満)という男が立っていました。

荒木 「昨日がこちらのお部屋の利用料の支払期限だったんですけれども」
修  「家賃はおやじが…」
荒木 「お家賃ではなく『利用料』です。ご入金がありませんでしたので、ご通告どおり本日で契約解除ということでよろしいでしょうか?はい、では直ちに退出していただきたいんですけれども、ご準備の方はお済みでしょうか?」
修  「急にそんなことを言われても…」
荒木  「あの先日、その旨は内容証明郵便にて通知させていただいているはずですが」
修  「でも、一方的に出ていけなんて、借りている側の権利だってあるじゃないですか」
荒木 「あっ、あの、このお部屋の契約が賃貸借契約ではないことをご存じですよね?お客様がなさった契約は、あの冷蔵庫などの設備がついたこのお部屋の鍵の利用権の契約なんです。ですから入居時は敷金も礼金も不要でしたよね?残念ながらお客様には居住者としての権利はないんですよ」

 これは2007~08年に話題になった「ゼロ・ゼロ物件」を描写しています。つまり、敷金や礼金をゼロとする代わりに、賃貸料ではなく「鍵の利用権」などの名目で部屋を貸し、入金を怠った場合に退出を命じる手法です。これは借主の権利を保障する借地借家法の適用外なので、「借りている側の権利」という修の申し立ては即座に否定されたのです。

 こうしたやり取りの後、荒木は修に対し、2日間だけ待つこと、それまでに入金を確認できない場合は強制的に退出するよう言い渡します。

 そこで修は金策に努めますが、うまくいかず、なけなしの金のほとんどをスロットで失います。さらに、帰宅すると自宅の鍵が無断で取り換えられていました。電話で苦情を申し立てても、荒木は超過分の利用料と原状回復費用を入金せよ、それまでは荷物を担保として預かると冷たく言い放ちます。