仮に、米国の離脱を契機としてパリ協定が崩壊し、地球温暖化が進むようなことになれば、「結局、アメリカファーストは、米国の得にもならないからやめておこう」ということになりかねないが、トランプ大統領はそう考えない。

 米国の視点に立てば、米国以外の国々は引き続き温暖化防止に努めるわけだから、米国にとっては最高の結果が得られると考えているのだ。これは、他国に何と言われようと米国民にとって悪い話ではない。

 しかも、興味深い点もある。トランプ大統領は「パリ協定の内容が米国に著しく不利なので、内容の修正を求め、修正されなければ離脱する」と言っている。つまり、離脱を決めているのではなく、条件交渉をして、各国の負担割合が変更されれば復帰するというのだ。もしも交渉が成立すれば、温暖化は防止されることになる。米国と他国の負担割合が変わるだけの“ゼロサムゲーム”なのだ。

 もう1つ興味深いのは、米国が実際に離脱するのは、次の大統領選挙の翌日だということだ。つまり、「トランプ大統領が次の大統領選挙で負ければ離脱しない」という可能性も米国には残っているのだ。

ハードネゴシエイトで
有利な条件を引き出す商売人

 筆者は、トランプ大統領の本質は“商売人”だと理解している。契約が成立しなければ双方の損なので最終的に契約は成立させるが、その条件をできるだけ自身に有利になるようハードネゴシエイトをするからだ。

 その過程で「交渉決裂をほのめかす」というのは、1つの優れた戦略である。交渉を決裂させるつもりがないので、これは「ハッタリ戦略」と呼んでもいいだろう。

 これは、ガキ大将が「オモチャをよこさないと殴るぞ」と弱虫を脅すようなもの。本当に殴ると自分の手も痛いので、殴らずにオモチャを奪うことが本当の目的なのだ。

 また、トランプ大統領は日欧などからの自動車輸入に高率関税を課すと宣言した。これには世界中から「世界の貿易を縮小させる愚策だ」という批判が浴びせられたが、ふたを開けてみれば高率関税は課されていない。