ニュートンのリンゴが
落ちていなかったら

「泰蔵、ニュートンの前にリンゴが落ちていなかったら、今ごろどうなっていたと思う」

 当時、ジェリーは僕にこう問い掛けました。

 ニュートンは、リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の着想を得たという逸話があります。ニュートンの前に、リンゴが落ちなかったときの人類への影響について、彼は考えていたのです。

 どう思われますか。ニュートンが発見しなくとも、50年後、100年後に万有引力に気付いた人はいたかもしれません。ですが、科学技術の進歩は、だいぶ遅れたことでしょう。

 もしかしたら、まだ電気も発明されず、ろうそくで生きていたかもしれない。自動車もなくて、馬で移動していたかもしれません。そう考えると不思議な気持ちになります。

 ジェリーはその当時から、「ありとあらゆる人類の英知はインターネット上に集まってくる」と述べていました。さらに、デジタルデータの長所は、検索ができてソート(並べ替え)ができることにあるとも見抜いていました。

 その上で、彼は「その検索結果がパッと出てこなければ、それはないのと一緒だ。それが人類にとって大きな機会損失なんだ」と話していました。「だからこそ、人類のためにやらなければならない」と言って、彼はヤフーという会社をつくり、「スタートアップした」のです。

 僕は、彼の考えに「すごいな」と胸を打たれました。自分も何かを手伝ってみたいと、もんもんとしていた気持ちは消え、自然と体が動いていたのです。

 そこから大学でインターネットに詳しい仲間を集め、インターネット漬けの日々が始まりました。自身で会社を立ち上げ、起業家として、経営者として歩み始めることになったのです。(次回に続く)

構成/小島健志

*「孫家の教え」は隔週連載です