大企業は
愚痴の製造器だ

 もっとも、大企業についていえば、僕はそもそも大企業そのものが嫌いです。なぜなら、どんなエクセレントカンパニーといわれている企業であったとしても、大企業の人たちと飲みに行くと、不思議と愚痴ばかり出てくるからです。

 飲みの場で、何かの相談を受けることがあります。こちらは真剣に相手の話に耳を傾けて「こうすればいいんじゃないですか」と答えても、あーでもない、こーでもないと会社の愚痴が始まる。

 上司が自分を分かってくれないとか、社内のスピードが遅いとか、必ずといっていいほど愚痴が出てくるのです。

 僕が真剣に「なら会社、辞めたらどうですか」と返しても、「いやいや、それは孫さんのようにはいかなくて。なかなかね」となる。

 これが、自営業の人たちと飲むと、そうはなりません。なぜなら、彼らは自分で決めて自分で行動しているからです。これはこれで大変ですが、自分が決めたことなので、愚痴るようなことにはなりません。

 とはいえ、会社の愚痴を言いたくなるのも無理はないと思います。

 大企業に勤めていても、多くの人たちは、基本的に自主性を持って意思決定ができません。自分で資金調達することも、戦略を立てることも難しい。自分のパートナーを選ぶことすら難しいのです。

 そう考えると、彼らが悪いというのではなく、大企業という組織や仕組みがそうさせているのではないかと思います。僕は大企業が「愚痴製造システム」だとも思っています。

 また、「絶対に失敗してはならない」という考えが染み付いている人に出会うことがよくあります。

 そういう人に限って「いやあ、うちの会社でも新しいことをやっていかないといけなくて、相談に乗っていただけないですか」と持ち掛けてきます。

 ディスカッションして僕がアイデアを出した後に「孫さん、それは前例がないのですか」と言われると、さすがに驚きます。全ての新しい事例には前例がないのに、なぜそう言うのか、と。

 他にも、「うちの会社、固いので……」や「上司は理解できないので……」と前例を求める人がいますが、これは、本人がそう思い込んでいるにすぎません。会社や上司が実際に固いのではなく、本人が「失敗したくない」と、自分で自分をブロックしているのです。

 有名なノミの実験があります。瓶の高さよりも高く跳ぶノミを瓶に入れてふたをする。すると、体がぶつからないようにと、瓶の高さまでジャンプをしなくなるのです。しかも、ふたを取っても、ジャンプ力は戻らないままです。

 僕は、大組織にいる方々が自らの限界を自ら決めている。そしてそれをつらいと愚痴っていないかと心配になります。