周囲の人たちが地道な準備を
見ていたことで夢が実現!
新日本プロレス福岡大会の当日、来場する予定だった実況担当のアナウンサーが、前日の高校野球が雨で順延になったため、そちらの実況を優先するために来られなくなったというのです。
試合開始直前の福岡国際センターのテレビ朝日控え室で、ふと番組プロデューサーが私の顔を見て言いました。
「あれ? お前、実況してみたいって言ってなかったっけ?」
そこで私はカバンに入れていたプロレス記事のスクラップや準備していたノートをドサッと机の上に出し、「できます!」と答えました。ついに夢の扉が開き、はじめて夢の実況席につくことができたのです。
そこからおよそ1時間、試合開始ギリギリまで準備をし、たくさんのお客さんで埋まった福岡国際センターの花道を通って実況席に向かう私は、もしかするとレスラーより気合いが入っていたかもしれません。小学校時代からの夢を叶えた瞬間ですから、リングの前でヘッドホンとマイクが一体となった実況用の「ヘッドセット」をつけたときの感動はいまだに忘れられません。
また、後日に聞いた話ですが、このようにスムーズに事が進んだのは、実は私が地道に準備をしていることを見てくれていた会社のスポーツ部の先輩や「ワールドプロレスリング」の番組ディレクターがいたからです。彼らがテレビ朝日のプロデューサーにそのことを伝えて「いつか彼にチャンスを与えてほしい」と裏でお願いしてくれていたのです。スポーツ部の竹重裕行(たけしげひろゆき)先輩と松崎好彦(まつざきよしひこ)先輩、そして「ワールドプロレスリング」の海谷善之(かいやよしゆき)さんには本当に感謝しています。
結局その日は2試合を担当させていただき、これがきっかけでボランティアにもかかわらず、他の会場でも少しずつ実況やリポートをさせていただけるようになりました。
数年後にはテレビ朝日から正式に仕事として福岡の放送局に発注をいただき、後楽園ホール、大阪ドーム、札幌ドーム、両国国技館など、全国の会場で実況やリポートをしました。最終的には東京ドームでの夢の「IWGPタッグ選手権」の実況も全国中継で担当しました。