阿部の叫びが言霊と化したのか。湘南ベルマーレとの開幕戦を3-1の逆転で制したレッズは破竹の快進撃を開始。最終的には12勝5分けの無敗でファーストステージを制している。ターニングポイントとなった涙の訴えを、阿部は後に照れくさそうに振り返っている。

「あそこでバラバラになるのが嫌だった。サポーターと喧嘩したとよく言われるけど、そんなことはないんです。熱くなっちゃった部分はもちろんあるけど、正直な意見をぶつけてくれた彼らに対して、これ(ファーストステージ優勝)で少しは返せたかなと」

 次に見た涙は2017年11月25日の夜。アル・ヒラル(サウジアラビア)とのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦を1-0で制し、アウェイでの第1戦との合計スコア2-1で10年ぶり2度目のアジア王者を勝ち取った直後だった。

 ピッチ上にできあがった歓喜の輪の中に、阿部の姿だけが見当たらない。目を凝らしてみると、スタンドの間近にまで駆け寄った「22番」は右手で何度もガッツポーズを繰り出し、何度も何度も目頭を拭いながら、狂喜乱舞するファンやサポーターと万感の思いを分かち合っていた。

「やっぱり嬉しかったですよ。スタンドでみんなが喜んでいる姿が見えたから。選手たちの笑顔ももちろんですけど、真っ赤に染まったサポーターの笑顔を見るのが一番心に響くから」

 涙の理由を、阿部はサポーターへの感謝の思いに凝縮させている。ならば、3度目にして直近の涙は何を意味していたのか。ベガルタ仙台を1-0で振り切った決勝戦後の取材エリア。選手たちの最後に姿を現した阿部は、アスリートとしての率直な思いにまず駆られたと明かした。

「天皇杯は前回決勝に行った時に、下から優勝チームが喜ぶところを見ていたので。今回自分たちが優勝して、あの時の悔しさというものをリベンジすることができたので」

最高のサポーターの応援で一体化
2大会ぶりの天皇杯リベンジへ

 2016年の元日。味の素スタジアムで行われた決勝戦で、レッズは宿敵ガンバにまたもや苦杯をなめさせられていた。FW興梠慎三のゴールで前半のうちに同点に追いつくも、先制点を決められていたFWパトリック(現サンフレッチェ広島)に、後半開始直後にまたもやゴールネットを揺らされた。