同園は各園にロボットを取り入れた独自保育をうたい、企業主導型で新規参入した事業者の保育施設だ。一斉退職のあった2園は4月に開園したばかりの新設園で、園児がいたにもかかわらず、6カ月で休園に至った。経営者は、国からの助成金の入金が遅れたことを原因に挙げたが、経営者はもともと保育業界の人間ではなく、保育士の退職も頻繁に行われ、運営のずさんさも指摘されている。

 ただ、助成金の遅れについては、関係者が皆、口をそろえて不安を述べる。

 「今年4月に新園を開園予定なのに、まだ助成決定の連絡が来ない」。そう焦るのは、都内で企業主導型保育施設を営む園長だ。

 2016年に現在運営している園の申請をしたときは、17年1月に助成が決定されたものの、助成金が全て入金されたのは17年10月末のことだった。今年は内々定こそ出ているものの、助成決定の連絡そのものが遅れているという。助成金が出るまで運営費や施設費は自分で立て替えねばならない。その間に資金繰りに支障を来す園もあるようだ。

 一体なぜ、企業主導型保育施設をめぐってトラブルが多発しているのだろうか。

 ここでいう企業主導型保育施設とは、15年4月の「子ども・子育て支援新制度」で導入された「企業主導型保育事業」の助成を受けた認可外保育施設を指す。同施設は一つまたは複数の会社が従業員向けに園を設置したり、園と園児の保護者の会社とが契約することで企業の共同利用の形を取ったりする新しいタイプの保育園で、国や自治体の認可ではなく事業者の申請に基づき開園できるのも大きな特徴だ。

 認可保育所になるには運営実績が問われるのに対し、企業主導型保育施設は基準を満たせば新規参入も可能だ。その上、保育施設の整備費および運営費も認可保育所と同程度の助成が受けられる。17年度には2597施設の助成が決定、18年度は1870億円、19年度は1697億円の予算が付いており、今後さらに増える見込みだ。

 実は、保育行政は下図の通り、複数の行政にまたがる入り組んだ状況になっている。保育園には認可と認可外があり、福祉の側面から、親が就労中など保育の必要のある子どもを預かる施設であるため、厚生労働省が管轄している。一方、幼稚園は就学前の教育機関という位置付けであることから、文部科学省の管轄だ。認定こども園は共働き家庭の増加や少子化を背景に誕生した幼保一体型の施設で、内閣府が管轄する幼保連携型、厚労省管轄の保育所型、文科省管轄の幼稚園型がある。