しかし第三者からそう指摘されるのだからおそらくこれも事実である。父の所作を見て育った筆者が無意識でそれをまねするようになったのか、あるいはやはり親子だから自然と似るようになったのか。どちらかはわからないがとにかくあいさつのグダつき方がそっくりになっているらしいことを知り、父子の不思議さを思わされたのであった。

父の「遺伝子」をそっくり受け継ぐ
偏食傾向の原因を探る

 Aさん(44歳男性)の父は団塊の世代ど真ん中の生まれで、家族に厳しかった。仕事で成功した男性であるが気分屋なところがあり、虫の居所が悪いとAさんを始めとする家族はよく恫喝(どうかつ)された。

 Aさんは父親に対して無言のうちに反抗心を養い、親元を離れたい一心で自活し、やがて仕事でも成功して家庭を築いた。2人の関係はAさんが成人して以降、酒を飲み交わすまでに改善されていた。

「一緒に酒を飲むようになるまではほとんど嫌悪感に近い感情が強かったので、『絶対にこんな父親にはならない』と、反面教師にして育ってきたと思う。

 父は今、年相応に丸くなったが気分屋なところは相変わらず」(Aさん)

 反面教師にしていた父に自分が似てきたと思い知らされたのは、実家で父の若かりし頃の写真を見た時で、若かりし頃の父はAさんにうり二つであった。

「背格好が似ているのと顔の系統も同じだというのはわかっていたが、あそこまで似ているとは思わなかった。『俺にも親父の血が流れているんだな』と感慨深く、その頃はそこまで深く父のことを嫌悪してはいなかったがやっぱりちょっと嫌な気分になって、『親父とは違う人間になろう』と決意を新たにした」

 Aさんは「父がやっていることを自分がやらないようにする」試みを徹底した。風呂上がりに首にタオルを巻かない、みそ汁をすすったあと「アー」といちいち嘆息(たんそく)しない、歩く時ドスドスと足を踏み鳴らさない…などである。

 この試みの末、Aさんから容姿以外で父親を感じさせる要素はあらかた排除された。その後Aさんが父と自分の共通点を思い知らされたのは、子どもが物心がついたくらいの時だった。

 Aさんの妻が「好き嫌いをしないでなんでも食べよう」と子どもに教えていると、子どもは「パパはいいの?」と素直な疑問をぶつけてきた。確かにAさんは極端な偏食家で好き嫌いが激しかった。それをつぶらな瞳で観察していた子どもから指摘されたのであった。