米国とその同盟諸国、そしてロシアは、危険な政治的行き詰まりに陥っている。これは、ミスや計算違いによって起きることの多い軍事衝突、さらにはほぼ74年ぶりの核兵器使用の可能性にさえつながりかねない。ロシア側と改めて戦略的に関与し、この危険な断崖から引き返すためには、大胆な政策転換が必要だ。さもなければ各国は遠からず、冷戦時代より不安定で方向感覚が定まらず、経済的コストが大きい核のにらみ合いに置かれるかもしれない。米国が直面する最も困難な課題は、同時に最も重要な課題でもある。それは、ロシアの敵対行為に断固とした対応を取りつつ、米国にとって最も死活的な利益に再び目を向けることだ。われわれ3人は、米国とソ連の関係が最悪だった時期と、これに伴って起きた核の脅威を経験した。1962年のキューバ危機、1973年の第4次中東戦争、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻、1981~83年の中距離核ミサイルをめぐる対立は、緊張が高まり、信頼感が薄れ、核のリスクが高まった時期だった。われわれは2007年、ヘンリー・キッシンジャー氏とともに作成した文書の中で、不断の努力とプロ意識と幸運によって冷戦に伴う核の刃先からは逃れたものの、抑止力としての核への依存は、核保有国の増加とともに危険性を増し、有効性を減じつつあると論じた。米国と他の核保有国は、核なき世界という目標に向けて決定的な行動をいまだ起こしておらず、危険は増大し続けている。