◎ベッドで過ごす時間は7~8時間までにとどめたい

 3ヵ月後、再び「よく眠れない」と熟眠困難の訴えがありました。午前2時まで眠れなかったので、翌朝10時までベッドにいることもあるというのです。このため、臥床時間を7~8時間以内に制限するとともに、寝つきの良し悪しにかかわらず起床時間を一定にするよう指示しました。また寝る前には温かい飲み物を飲み、軽くストレッチをするといった行動のパターン化を勧めました。こうした指示を実行していくうちに、次第に睡眠リズムが整い、床に就くと緊張が解けて寝つきがよくなるようになりました。

「睡眠障害国際分類」でも、臥床時間過剰の弊害は指摘されています。「何時間眠らなければいけない」という思い込みは、睡眠へのとらわれをもたらします。

 少し控えていたゴルフも、以前のように毎週プレーするようになるなど、生活全般が活動的になっていきました。不眠恐怖の裏にあった「充実した翌日を過ごしたい」という願いが実現できてきたといえます。旅行の前夜は相変わらず寝つきが悪く、寝不足のまま出かけることもありましたが、支障なく旅行を楽しめました。

 次第に不眠恐怖は軽減し、前ほど眠ろうと焦らなくなりました。初診9ヵ月後には、ほとんど眠りを意識することがなくなったということです。

◎イチロー、タイガー・ウッズのような工夫も効果大

 先の患者さんにも助言したように、眠る前にストレッチをしたり、興味のある本を読んだりするなど、不眠へのとらわれから離れるような工夫、就寝前の行動習慣(パターン)の確立も、不眠の改善につながります。

 先日引退したイチロー選手は、バッターボックスに入る前、入ってからの一連の動作がルーティンとして決まっています。さらには、カレーライスを朝食に取るなど、生活全般のルーティンも決まっているそうです。すべては、最大限のパフォーマンスを実現しようとする工夫です。

 ゴルフのタイガー・ウッズ選手がマスターズ選手権で見事復活優勝しましたが、ゴルフのスイング前の「プリショット・ルーティン」が決まっています。

 眠る前の「プリスリーピング・ルーティン」(睡眠習慣)を決め、眠りのパフォーマンスを改善してみるのはいかがでしょうか。