米コカ・コーラと提携交渉をしていた

 そこで、これまではたとえ赤字でも出していた賞与を大幅カットした。普通は少しは調整するものなんですけど、一切なし。いろいろ言ってきた社員には「利益が出なければ当然。君たちは低収益事業なんだから」とはっきり言いました。米コカ・コーラに、最悪の場合は事業売却も含めた提携交渉をしていたのも事実です。提携すると商品のブランド帰属がすべて米国本社になるなど、条件が厳しく、こちらは断念しましたが、1.5%の営業利益率の事業をキリンが持ち続ける意味はない。

 15年にはP&Gの著名マーケッターの山形光晴さんを迎え、生茶のマーケティング担当にし、外部の血を入れました。トップも長年キリン内部で商品企画を手掛けてきた佐藤章社長から小岩井乳業にいた堀口英樹君に交代した。それから社員が本気になりました。その結果、生茶のリニューアルも大きく成功し、3年で売上高営業利益率を3%にする予定が、たった1年で5%を達成し、今は8%。今後は10%もいけそうになってきました。

 社員が不採算事業をやらなくなり、ちゃんと商品ミックスで利益が取れるようになり、全てが変わり、売却する理由がなくなった。

 社内の表彰制度であるキリン大賞という賞は、2017年は見事キリンビバレッジが受賞しました。受賞者には「磯崎さん、私たちを低収益事業と言ったことをみんなの前で謝ってください」と言われて謝りましたけど。社員がその気にならないと、どんなに良い戦略でも効かないのです。でも、見事に体質が変わった。

――総括すると、2000年代のキリンは何に問題があったのでしょうか。

 一番大きいのは「(加藤元社長が打ち出した)連結売上高3兆円構想」ですね。売上高のみを意識すると海外の大型M&A重視ということになりますが、ブラジルやオーストラリアの乳業事業は、10年後も維持できる事業といえるのかどうか。また、海外比率を高めることに集中した結果、新規に買収した海外事業が増え、地べたでこれまで会社を支えてきた国内の既存事業への投資は怠られてきた。

 私は売上高にこだわりません。こだわってたらブラジル売ってませんよ。19年度から始まる新中計でも売上高の目標は出しませんでした。大事なのはキャッシュです。