子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を集めた新刊『子どもが幸せになることば』。著者は、共働きで4人の子を育てる医師・臨床心理士で、20年間、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けてきた田中茂樹氏。親が「つい、言ってしまいがちな小言」を「子どもを信じることば」に変換すると、親も子もラクになれるという、心理学に基づいた「言葉がけ」の育児書です。

この記事では、著者がすすめる絵本を少しだけ紹介します。(構成:編集部/今野良介)

絵本の楽しみ方と13冊のおすすめ本

「絵本を読んであげても、あまり興味を示さないんです……」
「子どもから『これ読んで』なんて言ってきたことない……」

そういう親の「嘆き」を、ときどき聞きます。

私は、絵本を読むのが好きです。子どもと一緒に読むのも好きですが、自分でも読むのも好きです。選ぶのも楽しい。夜寝る前、布団に入って、子どもと読んでいました。自分の子育て、子どもと触れ合った経験の中でも、最高に幸せな時間だったと思います。

絵本は、余計な説明をせずに、書かれている通りに読むのがいいようです。

たとえば「川にかかったつり橋を」と読みかけて「つり橋っていうのはね……」などと言葉の説明を入れるような読み方は、しないほうがいいでしょう。そういうのは、いつか子どもがほかで学びます。
もちろん「つり橋ってなあに?」と子どもがたずねてきたら、簡単に答えてあげたらいいと思います。

「字を覚えさせたい」とか「感性を豊かにしたい」などの「下心」をもって絵本を選んだり、読み聞かせたりしていると、子どもが絵本を好きになりそこなうかもしれません。

絵本を読むのは、何かの目的のための手段ではなく、読むこと自体が最高の目的です。サッカーの試合を観ることや、オーケストラの演奏を聴くことと同じこと。最高の娯楽で、贅沢な時間だと思います。

絵本を選ぶときは、親が読んで、自分でも心にぐっとくるものを選ぶのがコツです。「子どもの心にぐっとくるかな」と思って選ぶよりも、自分の中の「子どもの心」に響くものを選びましょう。店員さんや、保育園・幼稚園の先生にアドバイスをもらうのもいいでしょう。

いい絵本は、ありがたいお経のようで、何度も続けて読むうちに、どんどん良くなってきます。幼い子どもの心に、魔法のようなフレーズが素晴らしい絵と一緒に届いていく、心理学的にもすごい体験です。

いくつか、私のおすすめの絵本を紹介します。

 

自分の中の「子どもの心」に響くものを

 

私が子育てしていたころからある、すでに「古典」となっている本ばかりです。

『へんてこ へんてこ』
(長新太・著/佼成出版社・刊)

不思議な橋が森の奥の川にかかっていて、その上を渡ると、体がにゅーっと伸びてしまう。猫は「ねーこー」になり、狐は「きーつーねー」になる。お化けもやってくる。象もやってくる。蛇なんかやってきたらどうなるか?

私の三男は「ねーこー」などの部分はすべて合唱して、終われば必ず「もう一回読んでや」でした。

『まがればまがりみち
(井上洋介・著/福音館書店・刊)

何より絵がめちゃめちゃにすばらしい。「ひぐれの町の曲がり道 何が出るのか曲がり道……」引き込まれるこのフレーズと、絶妙の色合いの絵。自転車男やえんとつ男、がまなんかが出てきます。

日本が世界に誇る傑作だと思います。

『がいこつさん』
(五味太郎・著/文化出版局・刊)

何かを忘れて寝つけない「がいこつさん」。忘れたことを思い出しに、街へ出ます。「それも そうだな」が口癖のがいこつさんが、美しい青色の世界をさまよい、子どももいつのまにか「それもそうだなー」を繰り返すようになる名作。

以前、早期教育の是非に関する特集番組に、五味太郎さんは「反対」の立場で出ていました。賛成派の英会話教室の経営者の方が「子どもは、うまく導けばどんどん自分からやるようになるんです。バイオリンでもスポーツでも同じです」という意見を言ったのに対し、五味さんは「だからこそ、大人がそういうことを簡単にさせちゃダメだ」ときっぱり反論されました。

賛成派の人は「早く始めるほうが子どもはどんどん上達するのに、なぜそれをダメというのか?」と繰り返し、五味さんが反対する理由を理解しかねていました。

五味さんは、「子どもの心や子どもの人生へのリスペクトやおそれ」を大人は持つべきだと言いたかったのだと思います。五味さんの絵本を読めば、そのメッセージが伝わってきます。

そのほか、うちの子どもたちと私が好きだった絵本を10冊、紹介します。

詳しい紹介は割愛しますが、タイトルに興味をもったら、書店や図書館でぜひ調べてみてください。

・『ごろごろにゃーん』
  (長新太・著/福音館書店・刊)

・『ちょろりんのすてきなセーター』
  (降矢なな・著/福音館書店・刊)

・『落語絵本 ばけものつかい』
  (川端誠・著/クレヨンハウス・刊)

・『ライオンのすてきないえ』
  (西村敏雄・著/学研プラス・刊)

・『バムとケロのにちようび』
  (島田ゆか・著/文溪堂・刊)

・『まんぷくでぇす』
  (長谷川義史・著/PHP研究所・刊)

・『よりみちエレベーター』
  (土屋富士夫・著/徳間書店・刊)

・『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』
  (五味太郎・著/偕成社・刊)

・『
いつもちこくのおとこのこ——ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』
  (ジョン・バーニンガム・著/あかね書房・刊)

・『あくたれラルフ』
  (ジャック・ガントス・著/童話館出版・刊)