「総理の秘書官から殿塚先生とお会いしてくれと頼まれました。近いうちに、というより今日中にも総理から殿塚先生に連絡が入るはずです。もちろん、首都移転に関してです」

 村津は総理と会ったことと、総理は首都移転を前向きに考えていることを話した。

「出来る限り早くと考えているようです。その点では殿塚先生と同じかと思います」

 村津は話の最後に言った。

 村津の話を聞き終えた殿塚は無言で考え込んでいる。

「首都移転と道州制は、やはりセットで考えたほうが座りがいいな」

 顔を上げるとポツリと言った。

「総理がきみを通じて私に接触してきたということは、そういうことなんだろう」

「私もそう考えています。特に、森嶋君の論文を読んでから、そうすべきだと思いました」

「政治的にもそのほうが早いだろうし、賛同者も多くなる」

「ということは、与野党共に問題はないと考えていいのですか」

「大きな齟齬はないだろう。しかし、東京に選挙区をおく議員はやはり黙ってはいないだろう。東京から首都という冠が消えるんだからな。これはやはり大変なことだ。地価も下がるし、イメージもダウンする。都民の反対も尋常ではないだろう。首都東京の冠が消えることの不利益は膨大だ。おまけに自分たちのことも考えなければならない。なにしろ、選挙区を組み替えて、しかも議員定数が大幅に減るんだからな」

「早急に国民に公表して、国全体にとっては利益の方が大きいことを広くアピールする必要があります」

 ところで、と言って殿塚は村津を見据えた。