>>(上)より続く

料理が趣味の夫
極上の一皿を求めて

 Bさん(33歳女性)の夫は料理が趣味であった。確かに夫の作る食事はそこそこおいしく、食事の用意を積極的にしてくれることが、まずありがたかった。Bさんは日ごろから夫の手料理を褒めて、彼をその気にさせることを怠っていない。

「結婚する前に彼の料理を何度か振る舞われたことがあった。『結婚後も料理をしてくれるなら夫として望ましい』と、プラスの方向にしか考えが及ばなかった」(Bさん)

「プラスの方向にしか考えが及ばなかった」とBさんが話しているということは、実際はマイナスの方向にいくこともあるということである。この、Bさんにとってのマイナス方向に目が出たのが結婚式の準備であった。

 夫は料理上手な自分と、自身の味覚を誇っていた。そして味覚への自負を、披露宴の料理の選定において炸裂(さくれつ)させたのであった。

「式場選びを始める前から夫は『よく言われるけど、披露宴はやっぱり料理の味が大事だ』と話していた。その言い分は本当にその通りだと思うが、私と夫とで意識に差があった。私は『そこそこおいしければ問題ない。もちろんおいしいに越したことはない』というスタンスだったが、夫は『極上においしくなければいけない』だった」(Bさん)

 当日の参考となるよう、ブライダルフェアでは料理が振る舞われることが多い。3件ほど回って会場を決めるのが平均、とどこかで聞いたことがあるが、Bさんカップルは10件以上の会場を見て回ったそうである。それも全て、夫の舌を納得させる料理と出合うためであった。

「無料で参加できてご馳走もいただけるのだから、ブライダルフェア自体は悪くなかったが、さすがにそれだけの数を回るとなると疲れてくる。ただたくさん見て回れたので、これ以上ないくらい納得のいく式場選びができてよかった」(Bさん)

 どこの式場も料理にはそれなりに力を入れているので、夫の舌は大体満足させられた。しかし目指すは極上であるから、回った中でおいしさをランキング付けして、当然1位のところに決めることを夫は主張した。