フィンテックに有益な
少短設立という選択肢

 川上がSOMPOグループのデジタル戦略を担う専門部署に移ったのは、今から2年前の2017年1月のこと。それまではフェイスブックはおろか、「アプリやEC(ネット通販)サイトも利用していないアナログな人間だった」と苦笑いする。

 直前まで、金融法人部で銀行をはじめとする金融機関を相手にした伝統的な営業に長く携わっていただけに、異動した後は「新しい保険のカタチ、新しい保険会社の姿を模索するような日々」で、頭の切り替えにはかなり苦労したようだ。

 異動後、程なくして米シリコンバレーやシンガポールのスタートアップ企業などを視察したときは、情報技術(IT)と金融が融合したフィンテックの大きなうねりとともに、新たな事業アイデアを次々に生み出す新参企業の発想力に衝撃を受けたという。

 その一方で、人工知能やブロックチェーン技術をはじめ「技術的な面では、日本企業でもできることが多いのではないかと、視察を通じてあらためて感じるようになった」と川上は話す。

 今後市場で勝ち抜くためのカギになるのは、技術力はもとより、提携などによって事業の土台(プラットフォーム)をしっかりと整え、その中でサービスを展開し磨き上げていく機動力だとの思いに傾いていった。

 今年3月に開業したマイシュアランスを、保険会社ではなく、「少額短期保険業者」としたのは、まさにその機動力を重視したからだ。少短には、医療保険であれば保険金額が80万円以下、保険期間が1年以下といった保険業法上の規制があるものの、資本金は保険会社の100分の1となる1000万円で設立できる。

 さらに、事業免許制で「設立までにかなり時間がかかってしまう」保険会社と違って、少短の設立は登録制だ。

 商品についても、金融庁をはじめとした監督当局の認可制ではなく、届け出制(審査条件付き)になっており、小回りが利く運営ができる。

 実際、川上らは昨年7月に準備会社を設立し、当局との事前折衝を開始。それから半年余りで少短としての登録にこぎ着けている。

 既存の少短を“箱”として買収する選択肢もあったが、「組織を変える手間を考えると、やはり自分たちでつくった方が早いと判断した」という。

 現在、少短業界は不動産会社を中心に新規参入が相次いでいる。大手の国内生命保険会社でもデジタル戦略におけるテストマーケティングの箱として、少短の買収や提携を進める動きがあり、今後競争が激しくなりそうだ。