ついに今年プレサービスが開始される第5世代通信規格「5G」。「高速・大容量化」「低遅延」「同時多接続」という3つの特徴によって4Gをはるかに凌ぐ利便性をもたらすといわれ、現在、あらゆる業界で、5Gの技術を活用した事業・サービスの開発が進んでいる。では、消費者の視点に立ったとき、5Gは私たちの生活をどう変えるのだろうか。通信、ネットワーク分野に詳しい野村総合研究所・未来創発センター長の桑津浩太郎氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
5Gがもたらす変化を
消費者は実感できない可能性も
――5Gに関しては、「自動運転」や「スマートファクトリー」といった産業界のトピックが盛り上がっている印象です。一消費者としては、5Gによってどのような変化を実感できるのでしょうか。
わかりやすいところでいえば、「高速・大容量化」がもたらす変化を実感できるでしょう。極端な例を挙げれば、ダウンロード速度が上がることで、YouTubeが当たり前に4Kで見られる時代がきます。2022~23年ごろには、こうした変化が起きていると思います。
ただ、その速度に本当に人間がついていけるのかは別問題。先ほどの映像の話が典型です。5Gによって4Kや8Kの動画を簡単にダウンロードすることができる一方、人間の目が認識できる解像度には限界があり、4Kの解像度に満たないといわれています。そうした中で、はたして、4Kや8Kの動画が必要なのかは疑問です。また、すでに映像は日常生活に溢れ返っています。録画などで映像をためても、見切れないという人も多いでしょう。
要するに、ネットワークは高速化しますが、それを人間が処理できるのかは疑問ということです。スマホがなかった時代と比べて、今の私たちの生活は大きく変わりましたが、4Gから5Gへの変化をそれほど大きく体感できるのかというと、そこは難しいのではないでしょうか。
もちろん最終的には消費者が利用しますが、5Gはあくまでネットワーク。そこで何を運ぶのかについては関与しないのがネットワークの原則です。むしろ、今までのネットワークは「人間」に寄りすぎていたと思います。日本だけをみても、人口は1億2000万人ですが、車は6000万台、家は6000万戸に上ります。ネットワークにつながる“ネタ”は、人間以外にもたくさんあります。つまり、5Gは、社会全体をつなぐインフラとして開発設計されてきているのです。