5G時代の到来で
一番変わるのは「働き方」「教育」

――4GはiPhoneをはじめとしたスマートフォンの普及とともに語られることがありますが、5Gの時代を象徴するようなモノ・サービスは出てくるのでしょうか。

 誤解を恐れずにいえば、4Gはスマホがすべてでした。5Gの時代はスマホ、自動車、カメラ、家、街…など、あらゆるものがネットワークにつながります。そういう意味で、5Gは「溶ける」存在になります。

 自動車をはじめとして、さまざまな機械は「買った時からネットワークにつながっている」のがスタンダードになると思います。全く新しいデバイスができるわけではないので消費者には変化が見えづらいですが、利便性は高まるでしょう。

 また、モノやサービスではありませんが、一番変わるのは働き方だと思います。例えば、リモートワークやテレワークは5Gと非常に相性が良い。現在、リモートワークを実践しているのはホワイトカラーが中心ですが、これからは工場や建設現場にも広がるでしょう。もうすでに、建設機械の遠隔操作のトライアルは各地で進んでいます。

 これまで、工場で働く従業員や建設現場の作業員は仕事のために、必ず現場に行く必要がありました。しかし、遠隔で正確に作業できるのであればその必要はありません。5Gは「人間」と「場所」を分離することができます。つまり、ネットワークを活用することで危ない現場に行かなくても済むのであれば、女性にとっても働きやすくなります。そうすると、リモートワークでこれまで以上に仕事上の性差がなくなるでしょう。

 自動運転の技術も働き方を大いに変えるはずです。今、トラック運転手が東京~大阪間で荷物を運ぶとなると6~7時間はかかりますよね。そうなると、日帰りは難しい。しかし、もし一部を自動化できたらどうでしょうか。さすがに家の前まで行けといわれると、機械もキツイでしょう。しかし、インターチェンジ間であれば、自動化も可能だと思います。

 すなわち、東京~大阪間の運転は全部ロボットが行い、集荷したり、配達したりする最終段階だけ人間が行えばいいのです。雪が積もって動けないとか、緊急時のみ人間が遠隔操作で対応して、定常運転は全部機械に任せる。人間は機械のお世話をする役ですね。

 デスクワークだけでなく、工場、物流、店舗、さまざまな場面で5Gというネットワークを介して物理的な場所と人が分離する、独立する。5Gの本質的な価値は、消費者にとっては見えにくいですが、「生活者」には見えます。働くスタイルを大きく変えていくだろうと思います。

――「現場」に行って仕事をする必要がなくなり、働き方が大きく変わるということですか。

 はい。実は、同じことが「教育」の分野でもいえると思っています。すでに、大学の教養課程では、世界中のトップ教授の講義映像をネットワーク上で見るという方向に変わってきています。ネットワーク上で世界最先端の講義を受講できるわけです。