工業力の差が
米国の赤字、中国の黒字に反映

 米国は1976年以降、貿易赤字を出し、その額は増えてきた。一時的な赤字で、長期的には均衡するならいいが、大幅な経常赤字が長期間続き、純債務の拡大が続くのは問題だ。ドルへの信用が低下し、基軸通貨の地位を失いかねない。

 米国の過剰消費、工業の衰弱、対外介入等による財政赤字で生じた赤字体質は再起不能の慢性症状になっている。

 これは1980年代の日本や、今日の中国が不公正、狡猾な貿易政策を採ってきたためではない。日本では、米国が中国の「不正公な貿易」を非難するのを無批判に伝えるメディアも少なくない。

 1980年代には米国政府が「日本の不公正な貿易活動」を非難してジャパンバッシングが始まり、日本製の車をたたき壊す事件が頻発、「迫り来る日本との戦争」といった本が人気を博した。

 1989年の三菱地所の「ロックフェラーセンタービル」買収は反日感情の火に油を注ぐ形となり「“Nuke Japan”(日本に核攻撃を)」とのステッカーをバンパーに貼った車が走り回った時期もあった。

 この当時、ヨーロッパでも「日本のアンフェア・トレード・プラクティス」が流行語のようになっていた。

 当時、特に対日赤字を出していない国の記者までがそれを言うため、私が「なにを根拠に不正と言うのか」と問いただすと、相手は「アメリカの報道で言われているから、つい言ったまで」と弁解し、苦笑したこともあった。

 今の日本メディアの米中関係の報道もそれに似た点がある。

 トランプ大統領は中国や日本が対米貿易黒字を出していること自体が不正の証拠のような発言をするが、米国も1973年にベトナム戦争で敗れる以前は巨額の貿易黒字を出していた。

 米国人がそれを「悪」とみなしたことはなく、自国の優秀性を示すものと誇っていた。

 だが、中国はすでに1997年には粗鋼生産で日、米をしのいで世界一となり、2005年前後には銅、アルミ、化学繊維、化学肥料などの生産も世界のトップとなるなど工業化が急速に進んだ。

 今日では自動車生産が2808万台余りで米国の1100万台の約2.5倍、工作機械は約230億ドルで米国の3.8倍、パソコンは2億6000万台、スマホは12億個でほぼ独占状態にある。

 中国のGDPの中で、鉱工業生産は3兆7300億ドル(2016年)、米国は同年2兆7700億ドルだったから、物価の差を勘案しなくても、中国は鉱工業生産額で米国より35%多い。

 この工業力の差は中国の貿易黒字、米国の赤字となって表れている。