元財務大臣が十代の娘に語りかけるかたちで、現代の世界と経済のあり方をひもとき、世界中に衝撃を与えているベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳)が日本でも大きな話題となっている。
ブレイディみかこ氏が「近年、最も圧倒された本」と評し、佐藤優氏が「金融工学の真髄、格差問題の本質がこの本を読めばよくわかる」と絶賛、朝日新聞(「とんでもなくわかりやすいだけでなく、とんでもなく面白い」梶山寿子氏評)、毎日新聞、週刊文春等、多くのメディアで取り合げられ、経済書としては異例の13万部のベストセラーとなっている。
本書はなぜそこまで多くの人を惹きつけるのか。『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文、落合陽一共著、SBクリエイティブ)、『日本進化論』(落合陽一著、SBクリエイティブ)、『THE TEAM 5つの法則』(麻野耕司著、幻冬舎)といったベストセラーで編集協力をするなど、新しいタイプのビジネス書の世界で活躍するライター/編集者、長谷川リョーがその魅力を分析した。

おばあちゃんに経済の仕組みを説明できますか?

「あなたの祖母に説明できない限り、本当に理解したとは言えない」――。

 アインシュタインが残したとされる名言には、誰もが共感するところがあるでしょう。分かったつもりでも、いざ、だれかに説明しようとすると、うまく言葉にできない。「理解すること」、「言葉にすること」、「説明すること」。それぞれの営為の間には、とてつもない距離があるからです。

 たとえば、あなたが大の野球ファンだとしましょう。いかにして、スポーツに一切の興味がない女の子に、ルールの多い野球をほぐしながら平易に説明しますか?

 野球における「タッグアップ」にせよ、サッカーの「オフサイド」にせよ、込み入った知識を持っていればいるほど、全体像や根本をゼロから説明する難しさを覚えるものではないでしょうか。

 スポーツのルールならまだ易しい。

 世界をこれまで駆動し、存立させてきた「経済」という茫漠な概念を、あなたならどのように説明するでしょうか?