B課長はAの両肩をポンと叩いた。

「君に期待しているよ。ところでAさんはお酒飲めるヒト?」
「はい。特にワインは大好きでボトル1本はいけます」
「そうか!それは頼もしい。それと、AさんはLINEやってるかな?」
「はい」
「じゃあ早速、このグループに入らない?」

 B課長は自身のスマホでLINEを開くと、「B課長と飲む会」という名のグループ画面を見せた。Aは社内の人間とLINEをしたり飲みに行ったりするなど、私的な付き合いをする気はなかったために、即座に断った。

「お誘いはありがたいのですが、結構です」

 するとB課長は残念そうな表情で、「あっ…そう」とだけ言い、以後何事もなかったように業務内容の説明を始めた。そしてC主任を呼び、明日からAの営業に同行して指導をするように告げた。

会議がないことに気づき
Aは主任から情報を聞き出す

 それから2週間後、Aはあることに気づいた。自席に週3回営業会議議事録が置かれているのだが、社内で会議をしているのを見たことがなかった。

「いったい、どこで会議をやっているんだろう?」

 C主任に尋ねると、会議は業務時間終了後に、何と居酒屋で行っていると言うではないか。普段の営業活動は基本的に直行直帰で、社内で課員と顔を合わすことはほとんどない。そこでLINEでお互いに連絡を取り合い、週に3日はB課長お気に入りの激安居酒屋に集合し、面談やミーティングを行っていた。

 B課長を除くと課員は全員独身で、酒好きが多い。しかもB課長が毎回全員の飲み代を払っていたので部下たちの不満はなかった。

 酒が入ると親睦が深まり、意見、提案が活発に出てくる。それを普段の業務で生かした結果、売り上げが全国でダントツのトップ集団となったのだ。ところが「B課長と飲む会」グループに入っていないAは営業会議に参加できず、B課長との面談も受けられなかった。

 事情が分かったことは大きな収穫であったが、Aは業務時間終了後に酒を酌み交わしながらミーティングを行うやり方には納得できなかった。