家族を、選びなおすということ

幡野 しかも、これはがんなどの「患者」だけにかぎった話ではありません。

古賀 というと?

古賀史健
古賀史健(こが・ふみたけ)ライター、編集者。1973年、福岡生まれ。株式会社バトンズ代表。一般誌、ビジネス誌等のライターを経て、現在は書籍の執筆を中心に活動。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(岸見一郎氏との共著、ダイヤモンド社)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)、『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』(糸井重里氏との共著、ほぼ日)、インタビュー集に『16歳の教科書』(講談社)シリーズなどがある。『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』では原稿構成を担当した。

幡野 自分自身もそうだから、がん患者が抱える親子関係の問題点はすぐに理解できました。がん患者の集団セラピーでも、家族の文句を言っている人は多かったし。でも、LGBTや引きこもり、いじめなどの生きづらさを抱えている人も同じだった。みんな、根底には親子関係のねじれがあったんです。親から否定されてきたとか、認められないとか、純粋に親との関係が悪いとか。

古賀 うん、うん。そのことに、取材を進める中で気づいたわけですね。

幡野 そうですね。取材をはじめるときはあまり意識していなかったんですが、「あれ? この人もか」と、だんだん見えてきた感じです。あと、たまたま息子の優(ゆう)が2歳になるくらいで、教育への関心も高まっていて。そういうタイミングだったから、「親子」「家族」というキーワードに敏感だったのかもしれません。

古賀 優くんの存在も大きかったんですね。それでその後、タイトルにもある「選びなおす」という言葉に行き着いたのはどんないきさつだったんでしょうか。

幡野 古賀さんはじめいろいろな人と話す中で、ですかね。あと、是枝裕和監督の『万引き家族』の影響も大きいです。4回、5回……何回観たんだったかな。豊洲にある映画館に行って、毎回カップルシートにひとりで座って。

古賀 えっ、カップルシートですか?

幡野 5000円もするんですけどね、テーブルがあるんですよ。そこにノートを置いて、セリフを全部メモしていました。

古賀 はー、すごい。

幡野 そのなかで、リリー・フランキーさんのお母さん役を演じる樹木希林さんの印象的なセリフがあって。「ほんとうは家族って選べたほうがいいよね」というような、なにげないひとことなんですけど。「うん、そうだよね」とスッと……。

古賀 入ってきたんですね。

幡野 はい。それで、選べたほうがいいなら、いまから選びなおせばいいじゃないかと思いました。だってぼく自身、たとえば母親候補が5人いて、その中から好きな人を選んでいいよと言われたら……いまの「この人」を選ばないだろうなと確信もありましたから。