最近日本企業の間で、異業種の企業がぶつかり、掛け合わせるオープンイノベーションが必要だと盛んにいわれるようになった。だがここで強調しておきたいのは、実際にぶつかり合うのは、企業ではなく、生身の人間同士だということだ。
しかし、異文化で働いてきた人たちが集って、一つの目標へ向けてプロジェクトを成功させるのは意外に難しい。そこでまずは、オープンな交流であるネットワーキングで、他流試合をすることを勧めたい。
ただ残念ながら、日本人のネットワーキングは上手とはいえない。終身雇用で同じ企業に長く勤める人が多いからか、単一の価値観や文化に凝り固まってしまうのだ。
私は30年ほど前に日本からシリコンバレーに移ってきた。生き馬の目を抜くこの地でよそ者が生きていくためには、ネットワーキングで現地の人と交流し、人脈を広げることが最初の関門だった。そこで、実地で学んだ私なりのこつを紹介したい。
ネットワーキングの要諦は、「個人中心」「自己表現」「相手への共感」の三つに集約される。ネットワーキングは、会社が命令して集まるものではなく、それぞれ興味も目的も違う人たちが、「何か」を求めてお互いを知り合う活動だ。自分が何に興味があるのかさえ分かっていないこともある。そのような人たちが、自分を語り、相手を知ることで「何か」のヒントを得る人間くさい営みだ。
一方で、日本人はネットワーキングの場で、「私は○○株式会社××課のAです」と名刺交換する人がほとんどだ。これでは、相手からすると、その会社の特定の事業に現時点で興味がない限り、話は広がらず、名刺交換をするだけで終わってしまう。
自分は何に情熱を持っていて、何をしているのかという個人中心の考えがあって初めて会話が始まる。あなたは「××課のA」ではなく、一人の人間であることを語らなければならない。