「立ち去り型サボタージュ」

 どうも、仕事に対してカネ以上の「何か」を期待しすぎる風潮が生まれているように思うのです。とくに若者の間でその傾向が強い。

 つまり、仕事は「やりがい」「人のつながり」「自分らしさ」とセットになっていなければならない、と考える。これらがセットでなければ「やる意味がない仕事」「価値が低い仕事」である。極端にいえば、そんなふうに捉えられているように見えるのです。

 今、働きたくとも職に就けない若者が増えています。大きな社会問題となっているのは衆知の事実です。統計を見ても、2011年の若者(15~24歳)の失業率は8.2%。全世代の4.6%の倍近くにのぼっています。大学で就活中の学生たちを見ても、まさに必死の形相。大変な時代です。

 しかし、厳しい就職戦線をくぐり抜けてなんとか入社したにもかかわらず、さっさと辞めてしまう若者もかなりいる。

 近年、医療の現場でも、過酷な労働条件に意欲をそがれ、辞めてしまう医師が増えていることが問題視されています。しかも、声をあげて抗議することはなく、ただ無言で立ち去って(離職して)いく。いわば「無言の抵抗」なので、「立ち去り型サボタージュ」と呼ばれているようです。

 条件は異なるとはいえ、同じような現象が他でも起こっている。職場の人間関係でイヤな目に遭ったり、待遇に不満があったりしても、口には出さない。文句もいわずに、「自分はこんな場所にいるような人間ではない」とばかりに無言の抵抗を残して、職場に来なくなってしまう。