前回、「食に関する誤った情報や古い知識があまりにも多く氾濫し、それを信じて逆に健康を害している人がたくさんいる」ことを指摘し、エビデンスの質を見極めることで、誤った情報や嘘情報にダマされない術をお伝えした。しかし、嘘情報を嘘だと認めない人、間違った食習慣だと判明しても、「長年の習慣だから」と頑なに認めない人がいる。今回は『医者が教える食事術2 実践バイブル』の中から、「思い込み」が招く弊害と、思い込みの代表例である「日本人には米が合う」の真実について紹介する。
米食を否定すると日本人はなぜ感情的になるのか
簡単には変わらない私たちの思い込み
食については真偽を確認しづらい情報が飛び交っており、それらをどう解釈するかについても自己責任で臨まねばなりません。でも、その解釈の仕方にも問題があります。
テレビで「○○は体にいい」という情報が流れれば、すぐに踊らされてしまう消費者の在り方は問題です。そうした「新しいもの好き」な面がある一方で、一度誤った思い込みに支配されると、なかなかそこから抜け出すことができません。
私は『医者が教える食事術 最強の教科書』や『医者が教える食事術2 実践バイブル』では、最新のエビデンスと生化学に裏付けされた、正しい食事術を詳しく丁寧に紹介しています。でも、消費者自身が間違った思い込みから抜け出せずにいることも、正しい食事を実践する上で大きなネックになっているように思えます。
私たち人間の思考にはバイアスがかかっており、どうしても「自分の信じていることが正しい」という思いに引きずられます。誰だって、「それまで信じていたことが間違いだった」と知るのはつらいものです。
肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病の原因について、「悪いのは脂肪ではなく白米などの炭水化物だ」と説明すると、非常に感情的な反応を示す人がいるのも、それが理由でしょう。
「日本人には米食が合っている」
「肉や脂はなるべく食べないほうがいい」
このように信じてきた人たちにとって、「それはまったく逆だった」と言われても、なかなか受け入れがたいのだと思います。
しかし、本当に健康にいい食事を摂ろうと考えるなら、そういう思考からは自由になるべきです。間違っていたやり方はとっとと捨て、真に信頼おける情報を選び、健康にいいものを食べるよう、一日も早く舵を取るのが知的な姿でしょう。