7万部のベストセラーとなっている山口周氏の最新刊『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』。その著書の中で山口氏は、「役に立つ」の領域で勝負をしている企業は、自動車産業でも家電産業でも苦戦を強いられていると語る。
不便に対してソリューションを提供することで「役に立つ」。そのオールドタイプの発想が、もはや価値をなった時、代わりに有利になるのが「意味がある」の領域で勝負している企業であるという。その真意とは?(構成:松隈勝之)

この記事は、大企業、NPO法人を中心に有志の経営者や次世代リーダーが集うクローズドのコミュニティー新G研(新グループ経営改革推進研究会、運営:ファインド・シー)の7月19日の定例会にてなされた講演を再構成したものです。

トヨタのPBRは10年間ほぼ変化していない

山口周さん(以下、山口):今日本で時価総額が一番高い会社は、トヨタ自動車ですが、注目しなければならない数字があります。それがPBR、株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)です。

純資産の合計額と時価総額の利率がどれくらいなのか、レバレッジが効いているかで、株式市場からの期待の大きさがわかるのですが、トヨタのPBRは、ここ10年くらいは1倍ほど。つまり会社の価値である時価総額とほぼ同じなのです。日産やホンダはさらに悪くて、0.5とか0.6しかないと思います。それがどういうことかというと、改組した方が株主に対しては還元率が大きいということ。

BMWやポルシェは、おそらく数倍になってるはずですし、テスラに関しては100倍です。これが意味することは重要で、株式市場は、彼らを同じ産業だと思っていないということなのです。

どういうことかというと、グーグルが自動運転車を発売したとします。100万円で安全にどこにでも移動できて、高齢者がアクセルを踏み間違えることもないということであれば、みんな乗り換えるでしょう。ところがグーグルの自動運転車が出てくることで、ポルシェがなくなるでしょうか?フェラーリがなくなるでしょうか?

日本の自動車メーカーの場合、おそらくこれまでに作られたクルマの大半がスクラップになっていると思います。一方、ポルシェやフェラーリの場合は、8割から9割が、いまだに動態保存されている。永久にゴミにならないわけです。なぜなら、それはアートと同じように「意味がある」からです。