「役に立つ」領域で生き残るためのGEの戦略

山口:「役に立つ」の領域から「意味がある」の領域にシフトするといっても、簡単ではありません。役に立つモノをずっと作ってきた人が、意味のあるモノを作れるかというという問題があります。そこで参考になるのがGE(ゼネラル・エレクトリック)です。

GEは、もともと冷蔵庫や掃除機や洗濯機などを作る、ど真ん中の白物家電の会社でした。ところが、それまでの半額以下の価格で、はるかに性能が良い製品を日本が出したために、経営不振に陥り、事業を存続できなくなりました。

そこでGEは、選択を迫られた。ヨーロッパのメーカーのように「意味がある」ものにシフトするかどうか。しかし、役に立つものをずっと作ってきたアメリカの企業にとって、意味をつけるというのは、なかなか難しいことだったと思います。彼らは、やはり役に立つというところで戦っていくしかなかった。そこで彼らが活路を見出したのが、BtoBでした。

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BtoBの世界には、「役に立つ」ことだけが求められていて、「意味がある」は求められていません。だから、彼らは役に立つという分野だけで戦える、日本の企業が入ってこれない領域に逃げたわけですが、グローバルで本当に役に立つ会社にならなければ生き残れない。それを実直にやった80年代の経営者がジャック・ウェルチです。

ジャック・ウェルチは社長に就任してから、世界で1位か2位のシェアを取れる事業以外は、すべてリストラもしくは売却することで、GEのポートフォリオを大転換しました。当時は、そのやり方を乱暴だと批判する日本の経営学者もいましたが、世界でグローバルに戦おうとするとそのような決断が必要だったのです。

パナソニックにしても日立にしても、東芝やNECにしても、BtoBの分野に進出しようとしていますが、情け容赦なくリストラして事業を売却していくというマネジメントができなければ、これからますます厳しい戦いになっていくと思います。

そのような厳しい未来がはっきりしているのであれば、「意味のある」領域へ移行すればいいわけですが、問題は、組織能力としてはまったく違うものが必要になるということなのです。