MBA出願件数は、4年連続で前年割れ

山口:「意味がある」にシフトするのであれば、アート、直感、センス、質を上げる、個人の想い、ストーリーなどが必要になります。

「役に立つ」で必要なのは、サイエンス、論理、スキル、量を増やす、市場調査、データでしたから、マネジメントとしての仕組み、ガバナンスのモデルとしては、コンセンス型でよかったのですが、「意味がある」にシフトするのであれば、リーダーに大きな権限を渡して、センスを委ねるというガバナンスになります。両者は、言わば水と油なのです。

そこで何とか「役に立つ」「意味がある」を両立させようとがんばっている会社もあります。富士通、フォード、グラクソ・スミスクライン。「役に立つ」をつくっている典型的な会社ですが、アートスクールに幹部候補を送り込んで、アート思考を身につけさせようとしている。

経営幹部を育てることに関しては、これまではMBAというのが常識でしたが、実はMBAの出願件数は4年連続で前年割れしています。正解を出す技術がコモディティ化していることを象徴している現象だといっても過言ではないと思います。

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もう一つ新しい流れとして、金融機関やコンサルティング会社によるデザイン系の会社の買収が盛んになっています。ローカルにある、技術力のある会社なのにマーケットキャップ(時価総額)が低い会社を買収する。そしてデザインを一新して、リブランディングすることで市場価値を上げて売却し、キャピタルゲインを得るという手法です。

マッキンゼーがデザイン会社を買った後、私がいたBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)、アクセンチュアとかも皆デザイン会社を買っていますけれども、これもすべて正解を出すという能力、役に立つというものから、意味あるものを高めるというところにシフトしているのだと思います。