確固たる思想を持たないことが
自民党の強さを生んでいる

 「世界最強のキャッチ・オール・パーティ」自民党の強さとは、言い換えれば確固たる思想を持たないことかもしれない。だから、状況の変化に応じて、右派にでも左派にでも自由に姿を変えて、野党の政策を奪って弱体化させる。ポピュリズムが勢力を拡大しようとしても、柔軟に対応して飲み込んでしまうのだ。また、自民党が本当に支持層としているのは、声の大きな左派や右派ではない。彼らを相手にしているようにみせて、実は票をもらうだけで相手にしていない。そして、日本社会の中で最も層が厚い、中道層の「サイレントマジョリティ」の支持を得るように工夫している(第136回)。

 自民党というのは、伝統的な古い政党である。しかし筆者は、自民党はこれからの時代の議会制民主主義国における「新しい政党」のモデルとなるのではないかと考えている。具体的には、英国の保守党と労働党、ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)など、二大政党は合併して自民党のような「キャッチ・オール・パーティ」となり、中道層のサイレント・マジョリティの支持を集中的に獲得することで、ポピュリズムの台頭を防ぐのではないかという見立てだ。

 二大政党の「大連立」を何度も経験したドイツならば、合併はリアリティーがある。しかし、思想・イデオロギー的なこだわりを捨てることができず、左派・右派の二大政党の合併はどうしてもできないという国もあるだろう。

 例えば、英国は「EU離脱」に揺れながら二大政党が背を向け合ったままで、「EU離脱党」という新たなポピュリスト政党が台頭している。だが、一方で中道の「自由民主党」が勢力を復活させているのだ。

 また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領も、新しい中道政党を立ち上げて与党の座を占めている。中道勢力が新たに台頭して二大政党に取って代わることもいいかもしれない(第162回)。

 いずれにせよ、ポピュリズムの広がりに対抗する政党は、中道のサイレント・マジョリティを支持層の核にして、左派・右派のイデオロギーや思想にこだわりを持たず、国民のニーズを柔軟に取り入れる「キャッチ・オール・パーティ」だ。そのモデルは、日本の自民党ではないだろうか。