ビジネスの現場でよく使われる
「ユーザに寄り添う」とは何か
「ついやってしまう」体験のつくりかた
「わかる」は「良さ・正しさ」よりも大切
直感を生み出す原動力には、人間への理解が不可欠です。
私たち人間はどんな共通の性質を持っているか、どんな共通の記憶を持っているか?
それを知らなければ、体験はデザインできません。
体験をデザインするデザイナーは、自分の感性や記憶だけにしたがってデザインしている限り、よい体験は提供できないでしょう。
もし人々に広く楽しんでもらえるポップな体験をデザインしたければ、「ユーザはどんな脳や心の性質を持っているか」「ユーザはどんな記憶を持っているか」……あくまでもユーザを起点にしてデザインするしかありません。
では逆に、ユーザを起点にしないデザインとは何かといいますと……
ユーザのことを考えずに「一般的にこういうものが良いはずだ」「常識的にこれが正しいはずだ」などと「良さ・正しさ」を振りかざすデザイン……これこそが、デザイナーを待ち受ける最大の罠です。
たとえどんな名作ゲームでも、実際に体験してみるまで、ユーザはおもしろさを感じることはできません。おもしろいと感じてもらうためには、遊びかたが「わかる」までユーザを導くことが絶対条件です。
要は、「わかる」は「良さ・正しさ」よりも大切なんですね。
ところで、ビジネスの現場では「ユーザに寄り添え」という表現をよく聞きます。
一見するとすばらしい主張のようではありますが、具体的にどうすればユーザに寄り添うことになるのかという問題が残されたままになっています。
ユーザに寄り添うためには、ユーザがたどる「わかる」→「良い・正しい」という体験の順番に合わせて優先度を決めなければいけません。
商品やサービスの「良さ・正しさ」を伝えるよりも、まずは商品やサービスとの関わりかたが直感的にわかることを優先すること。
これこそが「ユーザに寄り添う」の本質だと考えます。
元任天堂の企画開発者による
ビジネスに活かせる発想法を大公開!
わかりやすく作ったつもりなのに人気の出ないサービス、
盛り上がるよう企画したのに誰も来ないイベント、
性能が優れているのに売れない商品、
ビジュアルを工夫したのにウケの悪いプレゼン、
将来のためにと「勉強しなさい」と言ってもまったくやらない子どもたちetc.
相手のことを思って一生懸命伝えようとしているのに、
なぜわかってもらえないのだろうか…。
それは「人が動くしくみ」を知らないから。
人の心を動かし「ついやってしまう」
仕組みと手法について体系的にまとめたのが本書です。
ついやってしまう・思わず夢中になる・誰かにすすめたくなる
商品・サービスのしくみとは?
企画・開発・マーケティング・営業等、幅広く役立つ
体験デザイン(UX)の入門書です。
入門書といっても、専門的な解説は一切なく、
だれもが遊んだことのある有名ゲームを題材に、
「つい」の秘密をわかりやすく解き明かしていきます。
巻末には、「つい」の手法を
5つのビジネスシーンに活用するやりかたも紹介。
1.考える/企画
2.話し合う/ファシリテーション
3.伝える/プレゼンテーション
4.設計する/プロダクトデザイン
5.育てる/マネジメント
売れる商品や愛されるサービス、
心を一瞬にしてつかむプレゼンは、
説明がなくても自然とその商品を手にとったり、
知らず知らずのうちにそのサービスに夢中になってしまったり、
期待をしていなかったプレゼンなのに最後はスタンディングオベーションで拍手をしたり。
「人が動くしくみ」を使えば、こちらが命令せずとも、
相手が勝手に動いてしまいます。
そのような「人の心をつかむ商品・サービス」のつくりかたを、
一冊にまとめました。
商品・サービス・アプリ・イベント等の
企画・マーケティング・開発・プロデュース担当者必読の一冊です!
「ついやってしまう」体験のつくりかた・目次
第1章 人はなぜ「ついやってしまう」のか―直感のデザイン
・メッセンジャーとしてのマリオ
・クリボーに出会ったプレイヤーが感じる奇妙なこと
・直感のデザインの構造
・おもしろそうと思わせるよりも大切なこと
・誰もが思わず解いてしまう問題の条件
・シンプルで簡単なものをつくる難しさ
・もうひとつの直感の起点
・ユーザに寄り添うとはどういうことか
第2章 人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか―驚きのデザイン
・ゲームの教科書としてのドラゴンクエスト
・なぜ「ぱふぱふ」なのか
・プレイヤーの予想を外すという体験デザイン
・きっかけは、ふたつの思い込み
・驚きのデザインの構造
・10種のタブーのモチーフ
・コンテンツの基本は直感と驚きの組み合わせ
第3章 人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか―物語のデザイン
・物語はどんな形をしているか
・断片的に語る、波をつけて語る、未来に語る
・体験の意義
・成長のモチーフ1 「ない」を集める
・時間は目に見えないし、問題は終わらない
・成長のモチーフ2 選ぶことで得られるもの
・成長をもたらすのにうってつけの体験
・成長のモチーフ3 旅の同行者
・客観を主観へと入れ替える
・成長の果てでなければたどりつけない体験
・なぜ物語はスタートに戻るのか
・物語のデザインの構造/体験と記憶
終章 私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」―体験デザインの正体
・体験と記憶、そして感情
・体験デザインの研究領域
巻末特典1「体験のつくりかた」の使いかた(実践編)
・1ページでまとめ ・応用1 考える/企画
・応用2 話し合う/ファシリテーション
・応用3 伝える/プレゼンテーション
・応用4 設計する/プロダクトデザイン
・応用5 育てる/マネジメント
巻末特典2 体験デザインをより深く学ぶための参考資料
著者プロフィール
玉樹真一郎(たまき・しんいちろう)
1977年生まれ。東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。
プログラマーとして任天堂に就職後、プランナーに転身。全世界で1億台を売り上げた「Wii」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わり「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれる。
2010年任天堂を退社。同年、青森県八戸市にUターンして独立・起業、「わかる事務所」を設立。全国の企業や自治体などで、コンセプト立案、効果的なプレゼン手法、デザイン等をテーマとしたセミナー、講演、ワークショップ、プレゼン等を年60回以上おこなうほか、コンサルティング、ウェブサービスやアプリケーションの開発等を行いながら、人材育成・地域活性化にも取り組む。
2011年5月より特定非営利活動法人プラットフォームあおもりフェロー。2014年4月より八戸学院大学・地域経営学部特任教授。2017年4月より三沢市まちづくりアドバイザー。
著書に『コンセプトのつくりかた』(ダイヤモンド社)がある。