医薬品、健康食品、化学製品、農薬などの研究開発、安全性確認、有効性評価など、あらゆる分野で人類に関係している「動物実験」。安全性を確かめるには必要悪と考える人も多いかもしれないが、動物実験に代わる方法を取り入れている国が増えてきているという。NPO法人動物実験の廃止を求める会の事務局長である和崎聖子氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)
疑問を感じず
残虐な実験を続ける日本
動物実験といえば医学研究や新薬開発のイメージが強いかもしれないが、化粧品、日用品、食品添加物、農薬、工業用品などでも行われている。
そのほかにも化学物質の毒性試験や生理学、栄養学、生物学、心理学などの基礎研究、大学や学校といった教育現場における解剖や手術訓練などの実習、あるいは兵器開発などの軍事領域まで、さまざまな分野に広がっているのだ。
実験に使われる動物も多岐にわたり、マウスやラット、モルモットから、犬や猫、ウサギのほか、鳥類、魚類、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、さらにはサルやチンパンジーなどの霊長類まで幅広い。
動物代替センターを運営し、動物を用いない研究への助成機関のAnimal Free Research UKと、英Cruelty Free International(CFI)の調査によると、世界では毎年、推定1億1530万匹以上が犠牲になっているというデータがある。
しかし日本では、どのくらいの数の動物が犠牲になっているのか、はっきりわかっていないという。和崎氏はこう語る。
「EUやアメリカでは、施設の登録、査察が義務になっていますし、違反が見つかれば罰則があります。一方日本では、兵庫県のみ条例で施設の届け出制があるだけで、国として実態を把握するシステムがなく、実験施設の場所はおろか、年間どのくらいの動物が実験に使われているかといった統計が一切出てこないのです。なかには雑居ビルの一室で動物実験が行われていたという、驚くような例もありました」