ラグビーW杯で史上初のベスト8という大躍進を遂げ、日本中を感動の渦に呼び込んだ代表チーム。特集「熱狂!ラグビー ビジネス・人脈・W杯」(全10回)では、そんな日本のラグビー界が抱える問題からビジネスとの共通点、意外なラグビー人脈までラグビー事情を一挙に解説する。第1回では、小説『ノーサイド・ゲーム』著者の池井戸潤氏、6月末に日本ラグビー協会の副会長に電撃就任した清宮克幸氏、バスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」創設の立役者である境田正樹・ラグビー協会理事ら豪華メンバーによる特別鼎談をお届けしよう。(「週刊ダイヤモンド」2019年8月31日号を基に再編集。肩書や数字などは当時のもの)
原稿用紙600枚をボツにして
書き直した『ノーサイド・ゲーム』
――清宮さんと池井戸さんは数年来の知り合いとのことですが初めてお会いになったのはいつですか。
清宮(以下、清) 最初の出会いは2015年2月に僕が日本一になった後(ヤマハ発動機ジュビロの監督として第52回日本ラグビーフットボール選手権大会優勝)、共通の知人が日本一のお祝いの会をしようと言ってくれて、六本木のステーキ屋に行ったときです。
僕は池井戸さんにお会いするのが楽しみで、代表作の『ルーズヴェルト・ゲーム』を買って読んでみました。そしたらヤマハのラグビー部にそっくりでめちゃくちゃ面白くて。池井戸さんに会ったら思わず、「ヤマハのルーズヴェルト・ゲームを聞いてみませんか?」と言ったんです。
池井戸(以下、池) そう。それで共通の知人が遅れてきたので、ヤマハのラグビー部について小一時間、話してもらって。「これはルーズヴェルト・ゲームの続編いけるな」と思いました。
清 あ、そこきっかけでした?
池 ええ、これいける、書けるぞと思って、ずっと抱えていたんですね。その後『下町ロケット』や『陸王』を作品化した後、昨年末になって書けるタイミングが来た。それが今回の作品『ノーサイド・ゲーム』です。
清 ラグビーW杯が日本であるから、ないからとかではなくて。
池 そう。でも、いざ書きだしてみたら、原稿用紙600枚がボツ。全然うまくいかなかった(笑)。
清 えぇ~。
池 書いてみないと分からないもんですよね。最初はラグビー礼賛小説を書いていたんです。ラグビーの精神を褒めたたえる小説を書かないとまずいと思っていた。清宮さんからわざわざ聞いたことをきっかけに作品化する以上は、盛り上げなきゃいけないかなと。
そういう小説を書いていたんですが、どうもしっくりこなくて、結局最後まで書いたのにボツにすることになって。それで(今年の)1月半ばぐらいから心機一転、書き直しました。