自動車の最終決断9 トヨタ「最後の聖戦」Photo:kyodonews

特集「トヨタ、ホンダ 、日産 自動車の最終決断」(全9回)の最終回は、トヨタ自動車による「国内販売チャネル改革」から、CASE(ケース。コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)時代に対応しようともがくトヨタグループの姿に迫る。広大なディーラー網はトヨタ躍進の原動力となってきた半面、自動車のシェアリングが一般化する時代には負の遺産となりかねない。

豊田家にしかできない
聖域の改革

「豊田章男(トヨタ自動車)社長は就任10年目の節目の年にこれまでで一番抵抗が強く、実現のために汗をかかなければならない改革を始めた。創業家にしか踏み込めない『聖域』に挑戦しようとしている」

 あるトヨタ関係者は、豊田社長が打ち出した国内販売網の構造改革をこのように評する。

 販売網が「聖域」と表現されるのには、歴史的な経緯がある。トヨタグループの部長クラスやディーラーの社員らが販売店に「天下り」することで“甘い汁”を吸ってきた過去があるのだ。その詳細は本稿の後半部分に譲るとして、まずは改革のアウトラインを説明していこう。

 改革の中身は、大まかに言って二つある。

 一つ目は、改革の“本丸”であるディーラーの再編だ。トヨタのディーラーには四つの販売チャネルがある。唯一クラウンを扱える「トヨタ店」、2番手として派生し、マークⅡやマークXを販売してきた「トヨペット店」、大衆向けの「カローラ店」、若者や女性をターゲットにした「ネッツ店」がそうだ。

 このように、顧客ターゲットによって各チャネルが専売車種を持つことで、すみ分けを図ってきた。今回の改革では、この「紳士協定」を撤廃し、全4チャネルで全車種を販売できるようにする。ディーラーの競争が激化し、統廃合が進むことは間違いない。

 古株のオーナーが多いトヨタ店やトヨペット店に比べて、後発のカローラ店やネッツ店のオーナーは競争心が旺盛だ。そのため、特に後者の2チャネルについては、同じエリアに別資本のディーラーが乱立する状況にある。グループ内競合の行き着く先は、生き残るか閉鎖するかの“死闘”だろう。