しかしながら、待ち受けていたのはプラットフォーマーの力をもってしても、損害保険という商品が思うように若年層に届いていかないという、厳しい現実だったわけだ。
問われる
保険自体の必要性
ネットで商機が広がりにくいからといって、損保の売り上げの9割を占めるリアルの代理店に答えがあるわけでもない。
多くの損保代理店は、経営者の高齢化などによって目下統廃合を進める必要に迫られており、顧客との接点を拡大するどころか、拠点数を削減していく方向にあるからだ。
業界にとっての最悪のシナリオは、ネットでもリアルでも若者との接点を思うように増やせないという八方ふさがりの状況で、損害保険の必要性すら感じにくくなり、国内市場の縮小が加速していくことだ。
損害保険だけでなく、生命保険も置かれた状況は同じだ。
LINEほけんの公式アカウント上に、バナー広告を出稿しているある生保は「数百万円の広告費用に対して、成約件数が1桁だった月がある」(幹部)とその惨状を明かす。
毎月数千円から数万円というお金を支払い、家の次に高い買い物といわれる生命保険に、スマホで手軽に加入しようという人たちが、ネット全盛の時代にあっても、いかに限られてしまっているのかがよく分かる。
この生保では来春をメドに、LINE上で医療保険などを販売することを検討していたが、成約率のあまりの低さから、ネット販売をはじめとしたデジタル戦略全体を根本から見直す必要に迫られている。
デジタル戦略の巧拙が、今後の企業経営の浮沈を握るとまでいわれる中で、生損保業界はその大きなうねりにどう向き合っていけばいいのか。
「無理に冒険せず、他社の状況を見ながら後出しジャンケンするのも正直なところよいのでは」
大手生保の幹部からそうした挑戦意欲を失ったかのような発言が出てしまうほど、業界には今、デジタル戦略を巡って閉塞感が漂い始めている。