「LINEほけん」の公式アカウントの友だち登録数は、現在930万人を超えているが、実際に契約に至った件数は今年10月時点で約26万件。転換率は5%にも満たない水準だ。
さらにスマホ保険など一部商品は、期間限定でユーザーに無料で提供し利用を促してきたが、関係者によるとそうした無料分の契約が、件数全体の7割程度を占めているという。
今年5月には、半日から利用できるスポット型の自動車保険の販売も始めたことで、足元では無料分と有償分がほぼ半々になり、有償分の契約は10万件に達したようだ。ただ依然としてこの規模では、システム開発やプロモーション費用といったコストの回収時期すら見通しにくい。
テコ入れに向けて、損保ジャパンなどは「日本郵政や大手の小売企業にLINEほけんを代わりに売ってもらえないかと提案をしている」と関係者は話す。
多くの友だち登録者を抱える郵便局や小売企業の公式アカウント上でも、LINEほけんをPRしてもらうことで認知度を高め、販売拡大につなげようとしているわけだ。
こうしたLINEほけんの苦戦は、個社の問題として片付けられる話ではない。
折しも業界全体が、金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックの推進に向けて、1000万人単位の利用者を抱えるLINEなどのプラットフォーマーとどう連携し、ビジネスを展開していくか試行錯誤を重ねる中で、保険とネットの親和性が低いことが、改めて浮き彫りになってしまったからだ。
そもそも、損害保険業界は国内の人口減少と若年層の車離れなどによって、今後収益の柱となっている自動車保険の保有契約が、長期的に漸減するというリスクを抱えている。
減少スピードを少しでも緩やかにするために、業界として若年層との接点をいかに増やし、自動車保険や火災保険の顧客として取り込んでいくかが課題になっている中で、その解の一つとして手を打ったのが、若年層に人気の対話アプリの活用だった。