ビジネスインサイダージャパンが出した、「働く女性にメガネ禁止」を強いる企業があるという記事に大反響が寄せられている。この謎ルールのルーツを辿ると、かつて「メガネをかけている」だけでお見合いを断られていた時代があったこと、そして社内結婚を企業が奨励していたことに行き当たる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

顔がテカったおじさんから
「メガネはダメ」と言われる理不尽

職場でメガネをかける女性顔のテカったおっさん社員から「メガネやノーメイクはダメ」などと言われるのは、およそあり得ない理不尽である Photo:PIXTA

 働く女性に「メガネ禁止」という“謎ルール”を強いる企業に批判が集まっている。

 きっかけは、ビジネスインサイダージャパンの竹下郁子氏による10月25日の記事。百貨店の受付、ショールーム、宴会場スタッフ、美容クリニックの看護師など、実際に上司などから「メガネ禁止」を命じられている女性たちの生の声を紹介したことだった。

 これが大きな反響を呼び、マスコミがこぞって取り上げ、キャビンアテンダント、化粧品の販売員、和装での接客業などなど、幅広い業界で同様のルールがあることが判明。「女性を見た目でしか評価していない」「時代遅れ」などと全方向から石を投げられているのだ。

 ちなみに、この中で航空会社に関しては、ちょっと気の毒というか、運悪く巻き込まれてしまっただけなような気がしている。もし乱気流などに巻き込まれ、機内が激しく揺れた際、メガネは吹っ飛んで割れてしまうようなこともある。報道によれば、CAは男女ともにメガネ禁止だというし、「客室の安全確保」を目的としているのなら批判されるようなものではない。

 とは言え、世の中に、メガネをかけ、顔もテカりまくっているおじさんたちから、「キミはメガネかけちゃダメだろ」「ノーメイクなんて、仕事やる気あんの?」なんて理不尽なことを言われてゲンナリしている女性が多くいらっしゃることは間違いない。

 では、なぜこんな“謎ルール”が生まれたのか。よく言われるのは、「日本の伝統的な男尊女卑という思想のせい」ということだ。これにはまったく同感だが、そこに加えて、個人的には、日本の企業社会のなかで脈々と続けられてきた、ある「特異なカルチャー」のせいもあるのではないかと思っている。

 それは「社内結婚」だ。

 メガネをしている女性社員は、職場の男性社員と良い縁談がまとまらない。そう考えた会社側が入社条件に「メガネ禁止」を課した時代があった。このバカみたいな暗黙のルールが、「野球部員は坊主頭」のような感じで、思考停止で後世に引き継がれる「負の遺産」になった可能性があるのだ。