メガネをかけているだけで
縁談を断られていた

 例えば、1969年3月1日の「朝日新聞」には「女性のめがねをからかわないで」という投書が寄せられている。ドラマやマンガの世界で、三枚目的なキャラやオールドミスがメガネをかけていることが多いということへの文句だった。

「いやいや、それはさすがに被害妄想でしょ」と思うかもしれないが、当時の年頃の女性たちは「実害」をかなり受けていた。象徴的なのが、1971年の「朝日新聞」の34歳の主婦による投書だ。この女性は、知り合いの25歳の女性についてこう述べている。

《彼女の“欠点”を発見した。彼女のめがねである。何のための欠点か。もちろん縁談である。めがねがこれほど障害になるとは気づかなかった。彼女はまだ正式な見合いをしたことがない。話はいくつかあるのだが、おぜん立ての段階で「めがねをかけているんですか」の一言でアウト。あわてて、彼女はこんなにやさしくて、頭が良くて…と叫んでも、「ご縁がなかったんですわね」で、とぼとぼ退散》(同上)

 また、2006年7月15日にも「朝日新聞」には東京都の52歳女性のこんなコメントが載っている。

「年ごろになって、憧れていた人から、君は近眼だからなあ、と言われたことを、いまだに悲しく悔しく思い出します」

 この時代のアラフィフ女性がお年頃というと、やはり1970年代である。メガネで見合いが断られるのだから、「メガネ失恋」があってもなにもおかしくはない。当時はこんな偏見や差別が当たり前のように巷に溢れていたということだ。

 要点を整理しよう。この時代の日本の男性たちは、「メガネをかけた女性」に対して今ではあり得ないようなネガティブな感情を抱いていた。では、そんな女性観を持つ男性たちを採用して、家庭を持たせて腰を据えて働いてもらいたいと考える企業はどうするか。

 決まっている。自分たちの会社の男性社員たちに「メガネをかけていない容姿端麗な花嫁候補」をあてがうのだ。これならば、先ほどのように「眼鏡不可」「容姿端麗」を採用条件にして、女性社員を雇う理由がすべて説明できる。