電話交換手の採用条件に「容姿端麗」!
昭和日本の仰天求人

 実は歴史を振り返れば、会社が、働く女性たちにメガネをかけさせなかったということは、日本ではそれほど珍しい話ではなかった。例えば、高度経済成長期に女性たちの憧れの職業として、高い競争率を誇った「はとバス」のガイドの募集も「眼鏡不可」が条件だった。もちろん、女性は「外見」こそに価値がある、という当時ならではの「女性観」によるものであることは言うまでもない。

 ただ、その一方で、そういう「外見」を商売に生かせるわけでもない職種の女性たちも、「メガネ禁止」を強いられることがあった。1970年の「読売新聞」に掲載された29歳の女性会社員の投書がわかりやすい。ある日、彼女は新聞の折り込みチラシを見て驚いた。

《それはある会社の電話交換手の募集広告だったが、「身長1メートル53以上、眼鏡不可、容姿端麗」という採用条件である。デパートの店員や秘書、ウエートレス、レジスターなどならまだしも頷けるし、交換手に声のよしあしをいうのならともかく、姿が見えるわけでもないのに「容姿端麗」とはどういうわけなのか、全くわからない》(1970年4月11日読売新聞)

 取引先や客の目にまったく触れない女性に「容姿」を求める理由は一つしかない。そう、同僚である男たちの「花嫁候補」である。この女性もそのような推測をし、以下のように述べている。

《一般に、美人はどうしても早く嫁にゆく。だからやめる者も多く、新陳代謝がどんどん行われて企業側はそれで一挙両得――。こんな憶測をするのは、不美人のヒガミだろうか》(同上)

 ヒガミどころか、極めて冷静かつ客観的な分析である。なぜなら、この募集が男性社員の花嫁候補募集であることは、「眼鏡不可」という条件がこれ以上ないほどわかりやすく示している。

 今でこそ「メガネ萌え」「メガネ女子」なんて言われているが、実は1960~70年代にかけて、メガネをかけている女性は、信じられないほどの差別を受けていた。