1970年代に爆発的に増えた
「社内結婚」

 国立社会保障・人口問題研究所主任研究官の岩澤美帆氏、三田房美氏の「職縁結婚の盛衰と未婚化の進展」というレポートがある。今日の初婚率低下のうち、約5割が「見合い結婚(親せき・上役の紹介含む)」の減少、約4割が「職縁結婚」、つまり社内結婚の減少で説明できるということを分析したもので、極めて興味深い内容だ。注目すべきは、その中で「職場結婚」が増えた時期だ。

《1950年代までに結婚した夫婦の出会い方の主流は「見合い」であり、「幼なじみ・隣人関係」といった地縁結婚が続いていた。その後、見合い結婚の割合は減少を続け、1970年代に入ると「職場や仕事の関係で」といった職縁結婚にトップの座を奪われる》

 メガネでお見合いが断られ、メガネをかけている女性が面接にすら呼ばれなかった1970年代というのは、「社内結婚」が爆発的に増えた時代だったのである。

 日本企業内における、女性の「メガネ禁止」には、「社内結婚の促進」という意味合いもあったはずだ。その後、1985年に男女雇用機会均等法ができるなどして、一般企業ではあからさまな女性差別はNGとなった。そうなると当然、女性社員の「見た目」を評価するうえで大事なチェックポイント「メガネ禁止」も消えていく。しかし、一部の業種、一部の業界では、この「悪しき習慣」が残ってしまったのではないか。

 時代が流れていくうちに、こういうものは当初の目的が忘れられ、形だけが残るものだ。つまり、「男性社員の花嫁候補」という実利的な目的は忘れられたものの、企業社会の中で、「女性はメガネをかけていない方が見た目がいい」という70年代の女性観だけがビタッと残った可能性があるのだ。

 そんな雑な話があるわけがないと思うかもしれない。しかし、年功序列の日本の企業社会で今、決定権、発言権のある世代はこの70年代に社会人になった人が多い。人間の本質はそう簡単に変わらない。つまり、今も「メガネ禁止」という前近代的な差別が残っているのは、若い時に「メガネ女子」を差別していた男性たちが企業社会の中で幅を利かせているから、という見方もできるのだ。