グレタ・トゥーンベリさんグレタ・トゥーンベリさんは15歳だった2018年夏、スウェーデン議会に対して、より有効な気候変動対策を求める活動を開始。この運動は世界中に広がっている Photo:Marc Piscotty/gettyimages

 職業柄、大小、有名無名を問わず、さまざまな日本企業のプレゼンテーション(プレゼン)を聞くことが多いが、残念ながら過去30年間、あまり進歩がない。投影したスライドの説明を延々と棒読みされ、聞いている方は心が折れてしまう。

 原因は、プレゼンの目的がはっきりしていないからだ。プレゼンをするのは何かを達成したいからであり、その達成のためのメッセージを伝える手段がプレゼンだ。すなわち本来は自身の主張を相手に納得させ、説得するためにある。

 しかし多くの企業では、プレゼンの目的が「納得・説得」ではなく「ほう(報告)・れん(連絡)・そう(相談)」になっている。ほうれんそうは情報提供が目的で、抜けや漏れがなく、情報を網羅的に提供することが重要とされる。

 なぜ企業内のプレゼンがほうれんそう型になるのか。それは納得・説得のプロセスが、会議室の外で行われるからである。

 日本企業での意思決定は「暗黙知」で行われる。つまり、共通の価値観を基盤とした個別の話し合いや「飲みニケーション」などを通してコンセンサスが進んでいく。そこでは、プレゼンは詳細な情報を提供する補助手段にすぎない。だからほうれんそう型になるのだ。

 これが外の世界との交流となると様相が一変する。外部の組織との間には暗黙知は存在しない。だから、外部の人に何かを納得してもらうには、まずは共通の基盤(コンテクスト)を明確にしないといけない。そのためには自社内の暗黙知を具体的に言葉で示し、形式知化する必要がある。この形式知を基盤に、相互理解する手段がプレゼンなのである。

プレゼンの四つの要諦

 では、ほうれんそう型のプレゼンしか経験していない人が、外部の人に対する納得・説得型のプレゼンができるようになるにはどうしたらいいか。一番お勧めしたいのは、起業家のピッチイベントに行くことだ。