高齢者が積極的にスマホを使うようになれば、それだけ若者との交流も増え、新たなサービスも生まれてくるだろう Photo:ZhangXun/gettyimages

 日本でも高齢者を対象としたテクノロジーの開発、いわゆる“エイジテック”(AgeTech)が盛んになる兆しがある。高齢者支援サービスの自動化や省力化、介護支援、安否確認、健康状態の管理、診断支援、遠隔診療など、さまざまなサービスが検討されている。その多くは高齢者一人一人の行動を見守り、ビッグデータとリアルタイムの情報から個々人の行動を分析し、改善策をAI(人工知能)を使って判断・提案する仕組みだ。

 一方で、高齢者を支援すべきタイミングで、なかなかそれが行われないケースがあることも浮き彫りになった。

 今年相次いだ大型台風によって発生した浸水災害のニュースでは、高齢者の住民が泥にまみれた部屋の掃除を、疲れた体にむち打ちながら続ける姿がテレビ画面に何度も映し出された。そうした方々にとってこれからの一番の課題は住宅再建だが、鉄腕アトム並みのロボットでも現れない限り、高齢者が自力で再建することは難しいだろう。災害に関しては、エイジテックはまだ無力なのである。

 期待されるのは公共サービスの提供に加えてボランティアの支援だが、数が足りないばかりでなく、被害状況の把握や支援のニーズと支援者のマッチングがうまく機能していない。地域の職員が歩き回って情報を集めたり、役場の掲示板に住民ニーズを書き込ませたりするような、前近代的な方法で運用されている状況だ。

 テレビ報道による情報伝達は、視聴者の興味をそそるニュースが優先され、しかも即時性が要求される。役所による牛歩の情報収集もテレビによる刹那的な情報伝達も、被害者と支援者をつなぐことには向いていない。ある被災地で東南アジアからのボランティアが大活躍したというニュースがあったが、東南アジアとの橋渡しをしたのは、役所やテレビではなくSNSだったという。

社会の思い込みが壁に

 自然災害で被災し、復旧に苦労する高齢者の方々の存在を知ると、現代日本に本当に必要なエイジテックはどういうものかが分かってくる。それは孤立や孤独をなくすエイジテックだ。

 高齢者の一人一人が多くの人とつながれば、お互いに助け合い、支援することができる。一方通行ではない双方向のコミュニケーションが基本で、それはコミュニティー形成にもつながる。高齢者による情報発信、相互コミュニケーション、コミュニティー形成が鍵を握る。