太陽光パネルには、住宅の屋根に取り付ける「住宅用」と大型発電所に用いられる「産業用」がある。2012年に再生可能エネルギーで発電した電気を買い取る固定価格買取制度(FIT)が始まり、特に産業用の太陽光発電が急速に普及した。それまで日本では住宅用が主流で、14年までは世界でもシャープ、京セラが生産量でトップ10入り。そこに三番手として、三菱電機やパナソニックといった日本メーカーが食らいついていた。

 だがFIT開始後、産業用に海外勢、特に中国メーカーが多数参入。15年以降は一度も日本メーカーがトップ10入りすることなく、中国勢が世界シェアの半分以上を占めるようになった。

 三菱電機は産業用と住宅用の両方を扱っており、広報によると、太陽光発電システムの全社の売り上げに占める割合は非公表だが、住宅用と産業用で半々だった。国内メーカーの中でも、首位グループとは大きな隔たりがあったとみられ、“規模の利益”が発揮できなかったのではないかとみられる。撤退しても業績面での影響は限定的になる見通しだ。 

トップ10のメーカーも
もはや八方ふさがり

 業界首位の京セラも苦境に陥っている。19年3月期の売上高1兆6237億円、営業利益948億円のうち太陽光発電事業を含む生活・環境部門の売上高は801億円で、前期よりも321億円も減少した。主な理由が、太陽光パネルの出荷量が前期比約40%減となるなど、太陽光発電事業の売り上げが減少したことだ。

 部門損益に至っては、生産拠点の集約などで原価低減に取り組んだものの、670億円の赤字となった。長期購入契約を結んだ海外企業から、固定価格で調達した太陽光パネルの原材料に関して、中国産の原材料価格が急激に下がった影響で、評価損が発生。このため、長期購入契約を見直しし、海外企業に対し和解金を支払ったことなどが主因だ。

 市場環境が厳しさを増す中で、三菱電機に対する逆風はさらに厳しかった。「強みとしてきた製品の長期信頼性や狭小屋根への設置性などに対する市場評価が相対的に低下」(同社リリース)したことで、今回の生産撤退を決めた。

 価格競争力を武器に攻勢を強める中国メーカーとの競争に加えて、国内の市場自体の伸び悩みも、日本メーカーに重くのし掛かる。