家族を困らせない相続第10回Photo:Malte Mueller/gettyimages

同性パートナーシップ制度などで話題となった同性カップルは、さまざまな不利な条件に置かれている。その弊害が特に大きいのが相続だ。2020年1月5日(日)まで全18回でお届けする特集「家族を困らせない相続」の第10回は、同性カップルにおける相続の実態に迫る。

「週刊ダイヤモンド」2019年8月10日・17日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数字など情報は雑誌掲載時のもの

同性カップルは
互いの相続人にはなれない

 冬田壮一さん(仮名・51歳)と巻良助さん(仮名・47歳)は男性同士の同性カップルだ。長年パートナーとして連れ添って生計を共にし、互いに支え合って老後資金をためながら幸せに暮らしていた2人を、ある日悲劇が襲う。冬田さんが不慮の事故で帰らぬ人になってしまったのだ。

 悲嘆に暮れる巻さんを見知らぬ男性が訪ねてきた。

「この家と預金は弟の財産。私が相続することになったので出ていってください」。それまで絶縁状態だった冬田さんの兄だった。突然の事故で遺言もなく、家と預金は冬田さんの名義だった。巻さんは、最愛の人と2人で築いた生活拠点と老後のための蓄えを同時に失ってしまった。