ユニバーサル就労で働く人
ユニバーサル就労によって千葉県佐倉市のショートステイサービスで働くAさん(42)。午前中はパソコン業務に就き、夕食時には配膳などの仕事をする

 引きこもりの44歳の長男を刺殺した元農林水産事務次官に、東京地裁は12月16日、懲役6年を言い渡した。東京都練馬区の次官宅で、半年前に起きた事件である。

 その事件の4日前には、川崎市で小学校児童ら20人が殺傷されたが、自殺した犯人も引きこもりがちだったと報じられている。

 元次官は「この犯人と息子の境遇が似ていて危惧した。他人に危害を加えないように殺した」と供述したといわれる。

 内閣府の調査によると、2018年に40~64歳で引きこもり状態にある人は61万3000人に達し、15~39歳の若年層を上回り、長期化、高齢化が進んでいるという。また、職場でのパワハラや家庭環境の悪化、精神疾患、発達障害などで、人間関係がうまくいかずに引きこもる人が増えている。最近は、学校でのいじめによる不登校、そして引きこもりになる傾向があるという。

制度開始から4年でも利用者わずか
「認定就労訓練事業」の空っぽな中身

 判決の6日前に、厚生労働省は「地域共生社会推進検討会」(座長・宮本太郎中央大学教授)を開いて最終報告書をまとめ、その中で相談支援の対象者として、引きこもりも挙げている。報告書は「日本の社会福祉は、生活保障、高齢者介護、障害福祉、児童福祉など属性別や対象別には制度が発展してきた」としながら、最近は「個人や世帯が抱える生きづらさが複雑化・多様化している」と述べる。

 このため「従来の社会保障の仕組みの下では十分な対応が難しい」として、新たな「相談支援」と「参加支援」が必要と説く。

 相談支援は、以前からある介護や子育て、障害者、生活困窮の各窓口を一本化して「断らない相談窓口」とするよう提言している。

 相談現場では、「背景に引きこもりなど本人や家族の社会的孤立、精神面の不調の問題、教育問題などが関係する場合が多い」と指摘。参加支援では、5年前に施行された生活困窮者自立支援法に基づく同制度の活用を促す。同制度の中には複数の事業があるが、引きこもりから脱するためには就労支援を設定している。  

 一般の仕事に就くのが難しい引きこもりの人向けに、研修・訓練事業として位置づけた「認定就労訓練事業」、別名「中間的就労」である。その事業を行うのが「認定事業所」。企業などに就職する前に、準備段階としてトレーニング・足慣らしをする。この認定事業所が身近にあれば、訓練の場が確保でき、引きこもりから抜け出る道筋ができる。考え方はなかなかいい。

 ところが、制度開始から4年がたっているにもかかわらず、認定事業所は全国にわずか1679件だけ。そのため、就労訓練者は、昨年度は488人しかいない。

 事業所は地域偏在が著しく、愛知県には298件あるが、岩手、茨木、群馬、愛媛、熊本の各県には2件だけで、就労訓練の場がないに等しい。これでは、制度が機能しているとは言えないだろう。器を作ったが、中身が空っぽである。事業所の主役として、社会福祉法人を想定していた。社会福祉法では、社会福祉法人が営む第2種社会福祉事業としてこの「認定就労訓練事業」を位置づけており、本来率先して登録すべきであるが、当の法人にはその自覚が足らないようだ。