トップと若手社員の距離が近く、年代に関係なくフラットに意見交換ができる社風だ(中央が高崎充弘社長) Photo by Ryuichi Mine

日本にある企業の実に99%は中小企業だ。その中には世界で高いシェアを握る実力派企業が幾つもある。そのような観点で経済産業省が選定したグローバルニッチトップ企業の中から、ユニークな企業を紹介する。(ダイヤモンド・セレクト編集部)

 大阪市東成区。小さな工場が立ち並ぶ一角に、圧倒的な国内シェアを誇る製品を持つ従業員40人の中小企業がある。作業工具メーカーのエンジニアだ。

 2014年に経済産業省が、ニッチ分野において高い世界シェアを持ち、優れた経営を行っている中堅・中小企業として選定した「グローバルニッチトップ企業」100社の一つに選ばれた。

 同社が販売する、ネジ頭がつぶれてしまったネジを外すためのプライヤー(ペンチのような工具)、商品名「ネジザウルス」は、同社が世界で初めて開発した製品で、累計450万本を売り上げる大ヒットシリーズとなっている。特許も国内・海外ともに押さえているため、類似品は存在しない。

「ネジザウルスGT」。縦溝が入っているため、ネジ頭をがっちり挟み込む Photo by Ryuichi Mine
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 高崎充弘社長(高の字は正式には「はしごだか」。他同)がネジザウルスを発明したのは02年。頭のつぶれてしまったネジを外せるプライヤーを作れないかと考えたのがきっかけだった。普通のプライヤーは挟む部分に横溝が掘られているが、高崎社長は縦溝をつけて丸ネジの頭をしっかりグリップできるようにした。こうして誕生した初期型は「かみついたら離さない」恐竜にちなんでネジ「ザウルス」と命名された。

 しかしすぐに売れたわけではない。鳴かず飛ばずの年月が6年続いた。転機は08年に訪れる。リーマンショックの影響で業績は低迷。起死回生の策で、顧客アンケートを基にネジザウルスの大幅な見直しを図った。

 顧客の要望は、1位「グリップの改良」、2位「先端の改良」、3位「バネを追加」、4位「カッターの追加」、5位「トラスネジ(頭が丸くなっているネジ)も外せる」だった。どこまで修正するか協議の末、5位まで全て修正することを決断。こうして生まれ変わった「ネジザウルスGT」が大ヒット商品となった。

ヒット商品の条件はMPDP
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「意外にも、新商品で最も高く評価を受けたのは要望では5番目だった『トラスネジも外せる』ことだった。大多数の要望に応えることが常に正解ではないことがよく分かった。ヒントはいつもマーケットインとプロダクトアウトの中間にある」(高崎社長)

 それ以来、30種類以上の商品を開発してきた。ヒット商品の作り方について高崎社長は、「マーケティング、パテント、デザイン、プロモーションというMPDPの四つが全てバランス良くそろうことが秘訣」だと語る。

社員は20~30代が中心 
経験ではなくアイデアで勝負 

 現在、社員は20~30代が中心。新商品の開発は若手社員からベテランまでフラットに行う。同社には三つのユニークな会議形式がある。現場で課題が発生したときにすぐに手を止めて3人で議論する「ミニ文殊」、アイデアで他人を笑わせたら勝ちという「ボケ文殊」、金曜日の午後に開発関係者が集まりものづくりの試作を行う「フライデーラボ」だ。

「アイデア勝負だから、経験はそれほど関係ない。これだけの人数なので、トップと現場の距離は近いし、若い人には、開発にも経営にも積極的に携わってもらいたいと思っている。これからは海外展開も本格化させたい。働きがいはあると思う」と高崎社長。

 同社のような知られざる実力派企業はまだまだたくさんある。就職先の選択肢として考えてみる価値は十分あるだろう。